記憶力向上の秘訣~脳を鍛える効果的な方法~

あなたの記憶力をアップ(向上)させる方法をお話しします。すぐに実行可能なものから「自分にはちょっと難しいかな?」という方法までいろいろありますが、ご紹介する「記憶術」の秘訣やテクニックを、いくつかは試してみていただきたいと思います。

情報を記憶し、それを必要な時に自在に取り出すのは非常に大切なことです。記憶はその保存期間の長さによって「感覚記憶短期記憶長期記憶」の3種類に分類されます。

この中で本当の意味での記憶と呼べるのは長期記憶です。長期記憶は基本的には生涯忘れることはなく、それが積み上げられ体系立てられていくと今度は「知識」と呼ばれるレベルになります。

例えば日本史の年表を覚えているだけならそれは「記憶」ですが、年表に沿ってその時代を体系立てて語れる様になれば、それは日本史の「知識」になります。

私達の脳は鍛えれば年齢に関係なく進化し続けます。記憶力はトレーニング次第でいくらでも高まります。

記憶力をアップ(向上)させれば、これまで以上に脳は刺激され脳は更に活性化し、高齢になってもボケることは無く、いつまでも脳年齢は若者のままでいることが可能です。

様々な記憶術を使って記憶力をアップ(向上)させることで、試験や仕事での生産性アップ、何時までも変わらぬ若々しさを保てるなど、お役にたてれば幸いです。

目次

記憶の仕組み

脳は記憶を保管する場所として機能しています。つまりコンピュータの記憶装置の様なものですが、もちろんコンピュータの記憶装置よりもはるかに大きな記憶容量を持っています。

実は人間の記憶の仕組みとコンピュータに記憶させる仕組みは大変よく似ています。と言うよりもコンピュータは脳の仕組みを真似て作られた機械です。

コンピュータの構成は「入力装置」「中央処理装置(CPU)」「記憶装置」「出力装置」から出来ています。入力装置というのは「マウス」「キーボード」「センサー」「スキャナ」などを言いますが、人間の場合これに相当するのが人間の持つ「五感」と言われるものです。

五感とは人間が目、耳、鼻、皮膚、舌で感じる「視覚」「聴覚」「臭覚」「触覚」「味覚」の五つを指します。人間の脳はこの五感の働きによって情報がインプットされます。

この時脳は情報を素早く取り込まなくてはなりません。インプットされた情報は脳が考え判断します。これはコンピュータの中央修理装置(CPU)の働きと同じです。処理され整理された情報は脳に記憶されます。

この時の人間の記憶にはすぐに忘れてしまう「感覚記憶」「短期記憶」、長く覚えている「長期記憶」の3種類がありますが、この感覚記憶と短期記憶、長期記憶については次ページ【長期記憶と短期記憶】をご参照ください。

記憶という働きはコンピュータのメモリやハードディスクの働きに相当します。

脳に記憶し貯蔵されている情報は必要に応じて外部に取り出されます。これが人間の場合は「話す」「書く」「態度で示す」などの動作であり、コンピュータの場合は「モニター」「プリンタ」などの出力装置になります。

私達は1日中、様々な情報に接していますので、情報は脳にどんどんインプットされて行きます。しかし毎日目に見えるもの、耳に聴こえるもの、臭うもの、味わったもの、触れたものなどの情報は膨大な量です。

これら全てを記憶していたらその規模があまりに大きい為、私達の脳はコンピュータのメモリやハードディスクの様に容量オーバーになってしまいます。コンピュータの場合は容量オーバーになるとそれ以上の情報を記憶することが拒否されますので、時々ハードディスクの中をチェックして不必要と思われる情報を捨てる「消去」という処理をする必要があります。

ところが私達は自分で意識して、脳の中に刻み込まれている記憶を消去することはまずありません。それなのに毎日新しい情報に接していても脳がコンピュータの記憶装置の様に、それ以上の情報のインプットを拒否することはありません。何故なのでしょうか?

それは私達の脳はコンピュータの記憶装置と違って「忘れる」という処理をするからです。

つまりインプットした情報の内あまり使われない情報はその場で即か又は一定時間経過後、特に意識しないままに脳が勝手に忘れてしまいます。人間の脳にはコンピュータには無いこの「勝手に忘れる」という機能がある為、脳はどんどん情報がインプットされてもパンクすることはありません。

潜在記憶

更に人間の脳の優れた能力には「潜在記憶」というものがあります。潜在記憶というのは普段は使わない脳の非常に深い部分に書き込まれている記憶のことを言います。自分ではとっくに忘れてしまったと思っていた情報も実は脳は完全に消去したのではなく、そのまま脳の深い部分に記憶しているのです。

例えば初めての子供が生まれた、子供が高校を卒業した時などの出来事は普段はすっかり忘れている様に見えても、実際は永遠に脳に刻み込まれます。それは子供に関するそのような出来事は貴重な記憶ですので、脳が記憶から完全に消し去ることは出来ないと判断したからです。

この潜在記憶は何かのキーワードで突然蘇えります。

人間の記憶がこの様に何段にも重層化しているのは、人間の脳というのはコンピュータの記憶装置などと比べてべらぼうに記憶容量が大きいからです。

私達の脳細胞の数は2~3歳時の頃がピークで、それ以降は毎日約10万個のスピードで死滅していると言われています。しかしそんな猛スピードで死滅していても、仮に100歳まで長生きしたとして、死滅する脳細胞の数は全体のわずか3.6%程度にしかならないそうです。桁違いの容量の大きさですね。

ただ「忘れる」というこの機能には困ることもあります。それは時々必要な記憶を脳から取り出せないことがあるからです。それが大した事ではなければ良いのですが、中には非常に重大な場合があって困ってしまいます。

例えば大きなショッピングモールで買い物をした際に車をどこに止めたのか思い出せなくなったり、お店まで来たはいいが何を買おうとしていたのか思い出せなかったり・・・あなたは、こんなことはありませんか?

知っている人に出会っても、その名前が思い出せないとなると焦ってしまいますね。特に相手はこちらのことをよく覚えていて懐かしそうに話しかけて来ると、当たり障りが無い様に相槌を打ちながら頭の中では相手が誰なのか必死で思い出そうとします。これを一般的に「ど忘れ」と言います。

このような記憶の欠落は10~20代の若い頃は滅多にありませんが、30~40代位になると徐々に増えて来ます。更に20年も経てば今度はアルツハイマー病を心配する様になります。

しかしど忘れする記憶というのはどんなに自分は物忘れがひどいと思っている人でも、実際は全部の記憶の中の数パーセントにしかならないそうです。だから普通の物忘れ程度でアルツハイマーの心配など全くの取り越し苦労というものです。

いずれにしても忘れるという症状は何も高齢者だけに制限されるものではありません。

記憶に関する脳の働き(記憶術)

記憶とは人や場所、物など起きた出来事を覚える行為です。この記憶力は筋力を鍛えることで運動能力が増す様に、脳のトレーニングによって上達させることが出来ます。脳のトレーニングのことを記憶術と言います。

記憶術は東西を問わず長年に渡って研究され、様々な方法が開発されて来ました。そして現在も研究は続けられています。

記憶術の研究の歴史は古く、古代ギリシャの時代には既に盛んに研究がされていたそうです。その時代はまだ紙が無くて、羊の皮をなめした「羊皮紙」というものが紙の代わりに使われていましたから、現代の様に手軽にメモを取ることは出来ませんでした。ですから様々な情報をどれだけ正確に記憶しているかで、その人の知識人としてのレベルが計られました。

又、昔の政治家は人前で演説をする時、原稿を見ずに演説するのが当り前だったそうです。官僚が書いてくれた原稿を棒読みする様な人は、政治家の風上にもおけなかったわけですね。

記憶している情報は必要な時にいつでも取り出せることが重要になります。本サイトでは記憶力をアップする為の秘訣をお話ししていきます。記憶術を理解・実行すれば、情報を脳のメモリーバンクにしっかりと保存出来る様になり、忘れて途方にくれることも無くなるでしょう。

長期記憶と短期記憶

長期記憶と短期記憶

人間は五感(視覚、聴覚、臭覚、触覚、味覚)によって、まずはランダムに情報を脳にインプットします。そしてその情報の重要性を脳が素早く判断した後、今度はそれを記憶します。とにかく情報は一度は脳に記憶され保存されるのですが、全て同じ様に保存されるわけではありません。

記憶はその保存期間の長さによって「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」の3種類に分類されます。

感覚記憶

私達の目や耳、鼻などのいわゆる五感は常に何かの情報を捉えています。そしてこれ等の情報はそれが何であってもごく短い時間は記憶します。

パラパラ漫画をご存知だと思います。少しずつアクションを変えた絵をカードの様なものに描いておいて、それを指でパラパラとめくっていくとあたかもその絵が動いている様に見えるあれですね。

映画館やテレビなどで上映されているアニメの大作も、基本はこのパラパラ漫画です。これは目が捉えた直前の情報(絵)をほんの短時間だけ脳が記憶しているので、それと新しい絵が重なって絵が動く様に見えるのです。

もしこの短時間の感覚記憶が無ければ絵は1枚1枚の絵だけの断片的な情報になってしまいますので、カードをパラパラめくっても絵が動く様には見えません。

感覚記憶はその大半は1秒以内に消えてしまいますが、その中で一部の情報だけに対して脳は「パターン認識」と呼ばれる処理をします。

例えば繁華街を歩いている時は向こうからやって来る無数の人の顔を見ていますが、赤の他人の顔などはよほどの美男、美女でも無い限りすれ違った時にはもう忘れています。

しかしその中に何時もテレビで見ているタレントの顔があったら、「あっ、女優の○○さんだ!」という様に脳は特別な認識をします。つまり私達の脳の中にある過去の記憶と結び付けて認識するわけで、これをパターン認識と言います。

この様に意味のある情報として認識されたものは次の短期記憶に移行します。

短期記憶

短期記憶は感覚記憶よりも確実な記憶ですが、ただその記憶している期間には限界があります。

例えば営業マンがお得意様に電話をかけようとして名刺を取り出し電話番号を見ます。見た瞬間は電話番号を覚えていますので、そのまま電話機に向かって記憶にある電話番号をプッシュすることが出来るはずです。

ところがあいにくお話中だったので20分後にもう一度電話しようとすると、たいていの場合はもう電話番号を忘れていますので、もう一度名刺を取り出して電話番号をチェックすることになります。

この様に短期記憶というのは短ければ数十秒、長くても数十分程度で忘れてしまいます。しかし上の例でその後も営業マンが何度もこのお得意様に電話をしたとしたらどうでしょうか?

たいていの人はいつの間にかそのお得意様の電話番号を暗記してしまいます。

この様に短期記憶は反復することで時間が経過しても忘れなくなります。つまり短期記憶が長期記憶に移行します。

長期記憶

この長期記憶まで進んだ記憶はケガや病気などで脳の記憶領域が欠落しない限り、もう消去(忘れる)されることはありません。

古い出来事などの場合で一見きれいに忘れている様に見えても、一旦長期記憶として脳が記憶したものは脳の非常に深い部分にちゃんと記憶されています。そして何かその記憶に関するキーワードが外部から与えられた時などに、突然鮮明に蘇えって来たりします。

人間の長期記憶にはコンピュータのハードディスクの様な量的な制限は無く、ほぼ無限に記憶出来ると言われています。

実際には限界があるのかも知れませんが、人間が生涯に使うのは脳のごく一部だと言われていますので、そういう意味からは「無限」と言うことが出来るでのでしょう。

長期記憶の代表的なものでは「自転車の乗り方」がありますね。自転車は一度乗れる様になったら乗り方を脳が記憶していますので、いわゆる[体がおぼえている]という状態になっていて、その後長期間自転車に乗っていなくても次に乗る時は必ず乗れます。

小学校の音楽の時間に習った歌なども好きだった歌は80歳になってもおぼえていますが、これもその歌が長期記憶になっているからです。

但し、私達の脳に保存されている記憶というのは必ずしも正確ではありません。あなたの記憶の中にもかなり曖昧なものがあるはずです。これは脳の中には記憶が溢れない様にあまり重要でない一部の部分を消去する、プロテクターのような働きをする部分があるからだと考えられています。

私達の脳は長い情報を記憶する時はそれが短期、長期に関わらず、まず情報をいくつかに分割します。この様に分割することを専門用語では「チャンク」と言います。

そしてその分割した情報を記憶した後、アウトプットする時はもう一度組み立て直して取り出します。人間の脳が一番覚え易いチャンクは5語と7語だと言われています。

5、7と聞くと何か思い出しませんか?そうです「俳句」や「短歌(和歌)」ですね。俳句は「5、7、5」で短歌(和歌)は「5、7、5、7、7」で構成されています。中国の「漢詩」も漢字が5文字の五言絶句と同じく7文字の七言絶句になっています。

この様に5と7が基準になっているのは人間の脳は5語と7語になっている情報が一番おぼえやすく、又、言葉としてアウトプットした時に心地よく聞えるからだと言われています。

記憶術の中にはこの脳の性質を利用して、多くのことを脳に記憶させる方法もあります。

私達の脳は非常に優れた記憶装置であり、ごく平均的な人でもたくさんの情報を記憶することが出来ます。そしてこの記憶装置は訓練することによって、もっと多くの情報をより正確に記憶出来る様になります。

バランスの取れた食事

バランスの取れた食事には体の健康だけでなく、記憶力を高める効果があります。食事のバランスを取る為には次の様な食品群から選んで、積極的に食べるようにしましょう。

  • 果物
  • 野菜
  • 全粒粉
  • 魚類
  • 脂肪のない肉(鶏肉など)
  • 乳製品(乳脂肪分2%以下の牛乳など)

排泄を促進して消化器官内を清潔に保ち、更に体内に適度な水分を保つ為には、水やお茶などを十分に飲むことも大切です。

水分の摂取と言えばコーヒーはどうでしょうか?コーヒーの成分には記憶力に直接影響を与える様なものは含まれていません。しかしその香りには大脳の右半球に酸素や栄養分を運ぶ血流を活発にする効果があるそうです。

人間の大脳は大きく分けて左半球と右半球に分かれています。左半球と右半球はそれぞれ役割が違っていて左半球が言語や論理的思考を担い、右半球は芸術的創造力や感情のコントロールを担っています。コーヒーの香りを嗅ぐと何となくリラックスした気分になるのは、右半球の血流がよくなるからなのかも知れません。


お酒はどうでしょうか?アルコールを摂取するとアルコールが蒸発する時に水分を奪い脱水症状が起きるので、物忘れをし易くなるという説があります。実際に動物実験ではアルコールが脳細胞神経を破壊し、脳の海馬に障害を与えるという結果が出ています。

アルコール依存症の人は常人と比べて記憶力が著しく劣ると言われますが、それはこの様な動物実験の結果からも裏付けられています。

この様に言うとアルコールは脳にとって百害あって一利無しの様に聞えますが、一方、お酒は昔から「百薬の長」とも言われています。それは適度な量のアルコールはストレスを解消して血流を良くし、脳をリラックスさせる効果もあるからです。

ですからお酒はほどほどに嗜むのならむしろ脳にはプラスになりますので、必ずしもアルコールが駄目だというものではありません。お酒を飲むのなら節度を持って楽しむ様にしましょう。

記憶を持続させると謳うハーブ系サプリメントなどが出回っていますが、その他のサプリメントも含めてあまり依存しない様にしましょう。

ハープの香りはコーヒーの香りと同じ様にイライラを解消し脳をリラックスさせる効果があると言われていますが、現在市販されているものの効果はそれほどきちんと証明されているわけではありません。

ビタミンは脳を活性化させる大きな役割を持っています。中でも脳に関係が深いのはビタミンB1と、ビタミン12です。

私達の脳のエネルギー源になるのはブドウ糖で、血液中に含まれているブドウ糖の半分は脳で消費されていると言われています。そしてこのブドウ糖が脳のエネルギーになる時に無くてはならない役割を果たしているのがビタミンB1です。

ビタミンB1が不足するとブドウ糖がうまくエネルギーに変換されなくなり、その結果記憶力が減退したり、時には「ウェルニッケ脳症」と呼ばれる脳の病気などになります。この病気は神経が壊死し、血管も壊れて手足が痺れたり、意識がなくなったりする怖い病気です。

ビタミンB12は何等かの原因で壊れた神経細胞を修復し、神経の働きを活発化します。又、ビタミンB1と同様にブドウ糖が脳のエネルギーに変わる手助けをしています。ビタミンB12は微生物の働きによって合成される為、植物性の食料品には含まれていません。但し、普通に食事をしていれば動物性の食べ物も摂取しますので、めったに不足することはありません。

しかし肉類を全く食べないベジタリアンは注意をする必要がありますね。いずれにしても必要とされるビタミンやミネラルを摂取する一番の方法は、やはりバランスの取れた食事をすることです。


私達の脳がきちんと考えて記憶を保存してくれる為には、まずは脳が健康でなくてはなりません。脳の健康の為には次の様な抗酸化作用のある食べ物がおすすめです。

  • ホウレンソウ
  • ブロッコリー
  • ブルーベリー

又、魚も大切です。

  • タラ
  • サケ
  • イワシ
  • マグロ

魚には脳を適切に機能させてくれるオメガ3脂肪酸が含まれています。オメガ3脂肪酸は魚の中でも青魚(例えばサバ、イワシなど)に多く含まれている脂肪酸で、脳の働きを活発化する「DHA」などが多く含まれています。

このオメガ3脂肪酸を妊婦が上手に摂取すると、生まれて来る子供の頭が良くなると言われています。又、魚に含まれる脂肪は肉類の脂肪とは全く別物で体にも良く、認知症を抑える効果もあると言われています。

記憶の欠落を抑えることで知られている葉酸(ビタミンB)を含んだ食物も、ぜひ取り入れましょう。


葉酸は次の様な植物性食品に多く含まれています。

  • 果物
  • 緑の葉の野菜
  • エンドウ類
  • 乾燥豆
  • 穀物
  • シリアル
  • 栄養強化パン

葉酸はその名前からして動物性食品には含まれていない様に考えられますが、動物のレバーには多く含まれています。葉酸が不足するとアルツハイマーや鬱(うつ)になり易い体質になると言われています。


他には脂肪分の少ない肉(鶏肉)や卵、ピーナッツバターなどタンパク質を含む食物も大切です。納豆や豆腐、豆乳の様な大豆加工食品も脳に良い食べ物だと言われていますので、積極的に摂取する様にしましょう。

いずれにせよ食べ物はどんな組み合わせでも十分なカロリーのものを食べれば、その分エネルギーが充填されて活動的になります。

但し、脂肪分の多い食物はコレステロール値が高くなるので、あまり食べ過ぎない様にしましょう。脂肪は炭素と水素、酸素の化合物ですが、この脂肪は人間の体には「脂肪酸」という物質になって蓄えられます。この脂肪酸には「飽和脂肪酸」「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」の3種類があります。

飽和脂肪酸は全ての水素原子が互いに結合している脂肪酸です。全部の水素原子が欠けること無く結び付いているので「飽和」という文字が付いています。動物性食品に多く含まれ常温では固まる性質があります。植物性食品でもココナツ油やパーム油などには多く含まれます。

一価不飽和脂肪酸というのは水素原子のペアがひとつ失われている脂肪酸です。常温では液状になっています。

多価不飽和脂肪酸は水素原子のペアがふたつ以上失われている脂肪酸です。常温では柔らかいゲル状か又は液状になっています。魚の脂肪はそのほとんどが多価不飽和脂肪酸です。

飽和脂肪酸は血液中の悪玉コレステロール値を上げる働きがありますが、この悪玉コレステロール値が上がると動脈硬化の原因になります。

一方、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸には悪玉コレステロールを減らす働きがあります。ですから、出来るだけ一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸が多く含まれている食べ物を、摂取する様にしましょう。

一価不飽和脂肪酸が多く含まれている食品にはオリーブ油があります。このオリーブ油に含まれている一価不飽和脂肪酸は、高齢者が記憶を失うのを抑制する働きがあると言われています。高齢者でなくてもオリーブ油は積極的に取り入れたい食品のひとつです。


これ等が血液や心臓の血管で混ざると、酸素や栄養が脳にたくさん回るようになります。そして最終的には記憶を保存する細胞に作用します。

脳内には絶えず血液を循環させることが大切で、オリーブ油は細胞を破損から守り成長を促す効果があることからも、積極的に摂取したい食材のひとつです。ただ「過ぎたるは及ばざるがごとし」という諺もある様に、体に良いと言われる一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸も摂取し過ぎると体内で過酸化物が作られ、動脈硬化や悪性腫瘍などの原因になることもあります。


それではこの飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の三つはどの様な割合で摂取するのが一番良いのかと言えば、これは非常に難しい問題です。

体質は人によっても違いますので摂取量のバランスもまちまちです。ただ基本的な日本人の摂取量の目安としては、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の摂取量の割合は「3:4:3」だそうです。

先にも述べた様にビタミンにも記憶を助ける働きがあります。記憶力をアップさせることで知られているビタミンB群が不足すると、記憶に支障が出ます。特に高齢者はビタミンB12が不足しがちですので、ビタミンB12を含むシリアルなども積極的に食べましょう。

各種ビタミンBを配合したサプリメントも市販されています。ですから魚や卵、乳製品などが嫌いな人はこの様なサプリメントを利用して補えば良いと思います。但し、サプリメントを利用する時は注意書きをよく読んで、適量を摂取する様にしましょう。

既往症があって治療中の人がサプリメントを利用する時は、必ず医師と相談してから利用します。記憶をシャープに保つにはビタミンCとEも摂取しましょう。どちらにも「抗酸化作用」があり、脳細胞にあるストレスの緩和に効果があります。

ビタミンCとEは安全なものですが、摂取する前には医師に相談することをお勧めします。

ここでちょっと上記の「抗酸化作用」についてご説明しましょう。抗酸化というのは一口で言えば「体が錆びるのを防ぐこと」です。金属ならぬ生身の体が錆びるというとちょっと奇異に思われるかも知れませんが、体も金属と同じ様に錆びます。

人間は体内に取り入れた栄養素をエネルギー化する時に、呼吸によって体内に取り入れた酸素を使います。しかしその際取り入れた酸素が全て利用されるのではなく、一部は「活性酸素」として体内に残ります。

大気中の酸素が鉄などの金属を錆びさせたり、皮を剥いたリンゴの表面を茶色に変色させたりするのはよくご存知だと思いますが、活性酸素はもっと強力な物質を酸化させる力を持っています。この活性酸素は量が多くなると脂肪を酸化させて、血管の内側に錆の様なものを作り出します。

この錆が出来ると血管のパイプが細くなり、その結果血管が固まり易くなったり(動脈硬化)、血管が詰まり易くなります(脳梗塞、心筋梗塞など)。又、脳に血液が回り難くなることで脳にも様々な障害を生じます。

この活性酸素の発生そのものは人間が呼吸をする動物である以上避けられませんので、私達の体には元々この活性酸素の働きを防ぐシステムが備わっています。それが抗酸化作用と言われるものです。

この抗酸化作用をもたらす物質を「抗酸化物質」と言いますが、抗酸化物質には次の様なものがあります。ビタミンC、E、βカロチン、リコピン、ポリフェノール類(フラボノイド、カテキン、イソフラボン等)、ゴマリグナン、クエン酸、セレン、銅、亜鉛、マンガン、グルタチオン、ハーブ類、コエンザイム、αリボ酸」

抗酸化物質は体内でも作られますが、年齢が高くなるに連れて生成する力が弱まりますので、体外から補充してやる必要があります。その場合は上記の様な抗酸化物質が多く含まれる食品を食べる様に心掛けるのは当然ですが、これ等の抗酸化物質をバランス良く配合したサプリメントを利用するのも良いと思います。

抗酸化物質が多く含まれる食品には「全粒粉」「緑の葉の野菜」「牛乳」「シーフード」などがあります。適度な抗酸化物質を摂取することは記憶力をアップする効果があり、又、気持ちを落ち着かせる効果もあります。

フリーラジカルは脳細胞のストレスの原因となるものですが、抗酸化物質はこのフリーラジカルを取り除き、記憶を改善してくれます。

若い女性などで食事制限によるダイエットをする方は少なくありません。しかし無理な食事制限をすると「記憶力」「判断力」「情報処理能力」の機能が著しく低下します。又、記憶力、判断力、情報処理能力が低下すると人間は「洗脳」され易くなると言われています。ですから他人を洗脳しようと思う場合は、まず死なない程度に食事を制限するのが常套手段です。


新興宗教などで信者に断食を強いるのも、その多くの場合は信者を洗脳し易くする為です。オウム真理教の事件の時明らかにされた信者の常食は、確かインスタントラーメンに米粒を混ぜた粗末なものだった様に記憶しています。

脳の機能を低下させない為には過度のダイエットは禁物です。特に我流での食事制限は時には命の危険もありますので絶対に止めましょう。

訓練

野球やサッカーは練習をすることによって技術が上達しますが、同様に記憶力も訓練をすることで高めることが出来ます。訓練を重ねればその分記憶力は上達し、様々なことを覚えるのがより簡単に感じる様になります。

訓練にはいろいろな方法がありますが、例えばグループでゲームをしてみましょう。メンバー全員の名前を聞いたら、しばらく集中してそれを覚える時間を取ります。すぐには覚えられないかもしれませんが、これを何度か繰り返している内に次第に記憶力が鍛えられます。

又、新聞や雑誌などの記事をピックアップし、目を通したらその内容について声を出して説明してみましょう。これは1人でも出来ます。誰か自分の前にいると思って、その人に対して説明するつもりで話せば良いのですから。

うまく説明出来ればその内容を集中して読んだということです。逆にうまく説明出来なければ集中力が足りませんから、もっと集中して読む様にする必要があります。

記事を読む時は細かい部分もしっかり頭に入れましょう。小さな事を覚えるのはメモリーバンクに保存される為の大事な要素になります。

集中する

本や新聞など何かを読む時には集中して読みます。これも訓練のひとつです。

又、誰かと会話している時は、その相手の言うことに神経を集中して良く聞きましょう。聞こえなかったり理解出来なかったりしたら、もう一度言ってもらうようにお願いしましょう。

雑音があるとなかなか集中出来ませんから、相手の話を集中して聞く必要がある時は、静かに話が出来る場所を選びます。

話を中断されるようなものはできるだけ避けるようにしましょう。例えばテレビが設置されている様な場所では、スポーツ番組などのアナウンサーの絶叫で話が中断されることがあります。

ただ訓練を積むと周囲でどんな大音響がしても惑わされなくなります。しかし一般の人は雑音や中断を極力抑えなければ、会話に集中出来ません。

又、記憶力をアップさせる為には繰り返すことも大切です。「情報を脳にインプットする→情報を記憶する→情報をアウトプットする」という動作を繰り返します。これは多くの方が学生時代に、例えば英語の単語を覚える時などに実践していたはずです。


情報をアウトプットする時は、一度声に出して自分に言い聞かせる様にすると効果があります。相手からの情報も口に出して繰り返すようにすれば、二人の間で確認することにもなります。

学習する時は連続して何時間も続けるよりも、1時間学習したら15分休憩するという様に短時間ずつ間隔を置いて学習した方が、よく記憶出来ると言われています。

人間の集中力が持続するのは普通の人の場合、1時間が限度だからです。これは学習だけでなく何かの会議をする時でも同じです。会議の時間が1時間を越えると出席者の集中力が低下して、出席者同士のヒソヒソ声による雑談が増えて来ます。

体を使って覚える

頭だけでなく体全体を使って記憶する訓練をします。感覚器官は多く使えば使うほど脳に与える刺激が多くなるので、記憶が脳に残り易くなります。

例えば「指折り記憶法」というものがあります。これは何かを暗記する時などに指を折りながら声に出して唱え、それを10回繰り返します。

脳のマップでは口の動きと指の動きというのは大きな領域を占めています。ですからこのふたつを使って脳により刺激を与えようというのが、指折り記憶法の狙いです。

この様に記憶する場合に別の刺激を合わせて記憶する方法は、指折り記憶法の他にもいろいろあります。

例えば昔の忍者は変装して敵の城に忍び入って情報を得た時、万が一怪しまれて取調べを受けた時にも忍者ということがばれない様に、情報は紙などに書かずに全部暗記しました。

その時絶対に忘れない様に短刀で腿を突き刺しながら覚えたそうです。忍者の仕事は命懸けですからその様な乱暴な刺激を使ってでも、情報を必死に記憶したのでしょうね。

暗記したらすぐ寝る

人間の記憶は就寝中は定着する様になっています。ですから暗記が必要な英語の単語や数学の公式などを記憶する時は寝る直前に記憶して、その後時間を置かずにすぐに就寝します。そして朝目を覚ましたらすぐにそれを口に出してアウトプットして記憶を確認します。

この訓練を繰り返している内に記憶が脳に定着して、簡単には忘れない様になります。

先頭文字で検索する

例えば今まではおぼえていた人の名前などが、どうしても思い出せないことがあります。しかしこの様な場合でも一度長期記憶として脳に記憶された情報は消去されたわけではなく、脳の中にはちゃんと記録されています。ですからほんのちょっとのヒントを与えるだけで思い出します。

そこでこの様な場合は頭の中でゆっくりと「あいうえお」を唱えてみます。するとその名前が例えば「鈴木」なら「さしす」まで行ったところで、頭の中に鈴木という名前がぱっと閃くことがあります。

名前の様な短い場合は特に訓練をしなくても誰にでも出来ますが、長い文書でも分割して記憶する訓練を合わせてすると、かなり長い文書でも同じ方法で思い出すことが出来ます。

この方法を応用したものに「先頭文字記憶法」と呼ばれる訓練があります。

意味付け・語呂合わせ

意味の無いものに意味を付けたり、数字などを覚える時にそれをよく使われる言葉に変える訓練です。

意味付けと語呂合わせについては後の章で詳しく述べますので、ここでは詳しい説明は省略します。

メモを取る

人間はどんなに努力しても情報を全て記憶しておくことは出来ません。ですから常日頃からメモを取る習慣を付ける様にしましょう。

もちろん全てのことをメモするのではなく、今後残しておきたい重要なことだけを書き留めておきます。

ただ状況によってはその場ではメモが取れない場合があります。例えば重要な商談をしている時にあまりメモばかりしていると、相手はあなたの手元ばかりが気になって商談に集中出来なくなります。

その様な場面ではその場でのメモは最も重要なポイントだけにして、相手と別れた後ですぐに商談の内容をメモします。この場合のメモは挨拶を済ませて分かれた後直ちにしなければ、記憶が曖昧になります。

メモは手帳にしても良いのですが、携帯電話のメモ機能を利用するのも良いのではないでしょうか。多くの人は、携帯電話は常時持ち歩いていると思います。

記憶力の訓練では文章を早く読む「速読術」と、音声で録音した情報を早聴きする「速聴術」の訓練を合わせてする必要があります。速読術というのは古くからある読書法です。

昔まだ印刷技術が今日の様に発達していなかった時代、本というのは数も少なく貴重品でした。

ですから本は非常に高価で、買うお金が無い人は誰か知り合いで本を持っている人から借りて、それを自宅で一生懸命読んで勉強しました。

借りた本は出来るだけ早く読み終えて返さなければいけないので、早く読み終える為の速読術が生まれたと言われています。

速読術というのは昔からよく言われる、「文章を斜めに読む」といういわゆる読み飛ばしとは違います。早く読むだけでは何の意味も無く、早く読みながら内容もしっかり理解しているのが速読術です。

この速読術の訓練をすることで、情報の本質を素早く理解する訓練が出来ます。速聴術は録音技術が普及してから現れたもので、速読術の様に古くからあるものではありません。

速聴術とは録音された音声を聞き取る時間を短縮する為、早送りをして聞き取る技術です。音声を早送りすると最初の内は意味が全く通じませんが、訓練をすると2倍速はもちろん4倍速でも正確に聞き取れる様になります。

速聴に慣れると会話をしている時の理解力が高まります。普通の会話は速聴に比べるとゆっくりに聞こえますから当然ですね。速聴は英会話のトレーニングにも利用されています。

体を動かす

運動と脳の働きの間には密接な関係がありますので、脳をきちんと働かせて記憶力を高めるには体を動かすことがとても大事です。

運動と言っても何もスポーツをするばかりが運動ではありません。スポーツが出来るならそれに越したことは無いのですが、スポーツをするにはそれなりの体力と時間の余裕が必要です。

しかし現代人は多忙な人が多く、又、体力には年齢差や個人差がありますので、高齢の人や体力の無い人が無理な運動をするのはかえって体を損ねることになります。

ですから、運動は自分の時間や体力に合わせて適度なものを選ぶことが、長続きさせるコツです。

誰でも出来る運動は散歩

散歩をする時は大きく手を振ってやや早足で30分を目安に歩きます。毎日少なくとも30分歩く様にすれば、集中力が増して物事をシャープに考えることが出来る様になります。

1回に30分歩かなくてもお買物などに行く時は出来るだけ自転車などを使わない様にして歩いて行くだけで、1日分を合わせれば確実に30分以上歩いた運動量になります。

犬を飼っておられる方は犬の散歩係になるのもいいですね。犬は結構早足ですので歩いて付き合うと良い運動になります。犬も喜びますから一石二鳥です。

散歩をして脳の機能を高めると共に、日頃感じているフラストレーションを解放させましょう。散歩は記憶の妨げとなるストレスを上手に管理して心を解放出来るのでお勧めです。最近は中高年だけでなく若者や子供にも肥満体系の人が増えています。いわゆる「メタボ腹」の人達です。

肥満の人の多くはそれが健康に何等かの害を及ぼしている傾向があります。肥満体系の原因の多くは運動不足による脂肪の溜まり過ぎですから、最近自分はどうも太り過ぎだと思ったら散歩や軽いジョギングからでも良いので、出来るだけ運動をする様にしましょう。

若い女性などは美容の観点からスポーツクラブなどで汗を流す方が多いのですが、正規のインストラクターの指導を受けた運動は美容の効果だけでなく、脳にも良い刺激を与えています。簡単に言えば頭も良くなりますので、お金が続く限りぜひ続けてください(笑)。

人間の体は定期的に運動をしないと動脈が詰まり、血液が体内を循環し難くなります。私達の体内で栄養分を生存に必要なエネルギーに変換しているのは、呼吸によって体内に取り入れられる「酸素」です。この酸素は血液によって運ばれ、脳の各部にも無数の毛細血管によって運ばれています。

この大事な血液の流れが悪くなると脳は酸素を十分に取り込めない、いわゆる呼吸困難の様な状態になってしまいます。するとエネルギー不足になった脳の働きは低下し、記憶力や思考力が落ちるだけでなく、最悪の場合は脳が縮小してしまいます。ですから脳が正常に働ききちんと考えられるようにするには、常に脳内の血液を十分に循環させなくてはなりません。日頃から動き回るように意識し、体を動かす活動を積極的に取り入れましょう。

行動がアクティブになればその分記憶力アップのチャンスも広がります。運動と脳の関係は血液の循環だけではありません。

脳には大脳と小脳があります。そして大別すると大脳は思考や記憶、想像力などの分野を司り、小脳は運動の分野を司ると言われています。

更に大脳は左脳と右脳に分かれていて私達が何か言語を使うなどの論理的な思考をする時は、ふたつの大脳のうち主に左脳が活発に働いて記憶機構を総動員さています。ところが近年研究の結果この様に左脳の各部が活発に働く時、小脳も活発に働いて、大脳の働きをコントロールしていることが分かりました。

従来は主に体全体の運動を司っていると思われていた小脳が、実は大脳が思考する順序をコントロールする働きも持っていることが分かったのです。つまりいわゆる「頭の回転が速い人」というのは大脳が発達しているだけでなく、運動能力が高く小脳も発達している人が多いということです。

これは動物実験によっても証明されています。この研究の結果、脳を鍛えて考える力や記憶力を高めるにはただ机の前に座ってガリ勉をするだけでなく、適度な運動で小脳を常に刺激するのも大事だということが分かりました。

ちなみに右脳は過去の経験に捉われない創造力やヒラメキ、直感、イメージなどの分野を受け持つ脳だと言われていますので、論理的な思考をする時はあまり働いていません。しかし最近はこの右脳をもっと働かせようという、いわゆる「右脳開発」が盛んに言われています。

右脳開発の目的には右脳の本来の役割であるところの創造力やヒラメキ、直感、イメージなどの能力を高めることもありますが、もうひとつの狙いは「潜在能力」の顕在化です。

私達はよく「考え過ぎてもう頭がパンクしそうだ」などと弱音を吐きます。しかし実際には私達は日頃自分の脳のせいぜい数%から、多くても10%程度しか使っていないのです。言い換えれば私達の脳の中で何時も働いている数%~10%以外の部分は、全く無駄にしているということです。

右脳開発の方法にはいろいろありますが、そのひとつは「集中力」を高める方法です。人間が何かに集中すると大脳の神経細胞の働きが活発化し、それが潜在意識の源である自律神経に伝わります。

その結果普段は使われていない潜在意識が活発に働く様になる為、脳全体の働きが何倍にもなります。つまり思考力や記憶力が今までの何倍にもなる可能性が出て来るということです。

ヨガ

前章において脳を鍛える時には集中力が大事だということを申し上げましたが、集中力を高めることはこの様に右脳開発にもつながっています。人間の脳は瞑想や呼吸法を取り入れることで、記憶力を高めることが出来ます。この瞑想や呼吸法で脳を活発化しようという方法のひとつに「ヨガ」があります。

ヨガはインドで今から三千年以上も前に宗教的な由来を背景に誕生した、心身の鍛錬法です。このヨガという言葉の意味はインドの古い言葉で「精神を統一することで究極の心の安らぎを得る」という意味だそうです。

ヨガの基本は座禅と呼吸です。座禅は日本の禅宗の修行などにも取り入れられていますが、座禅を組んで瞑想することで脳の中から邪念を振り払います。

ヨガの呼吸法では「口呼吸」は厳禁です。呼吸は必ず鼻からします。呼吸法には「吸う呼吸」「吐く呼吸」「腹式呼吸」「片鼻呼吸」などがあり、これ等をマスターします。

瞑想と呼吸法をマスターした時、左脳、右脳の働きは活発化します

ヨガは脳の働きを活発化するだけでなく、内臓器官の働きを調整し精神の安定にも役立ちます。女性のダイエットにもこのヨガを取り入れたものがあり、以前から人気があります。

脳は心配事や悩みで酷使するのではなく、脳が明瞭に考え、たくさん記憶出来る様な環境を整えてあげましょう。

ゲームやパズルの中にも記憶力や集中力を磨くことに役立つものがあります。実際にゲームが好きな高齢者の場合、何もしない高齢者に比べて脳の働きが活発だという調査結果もあります。

いずれにせよ脳は様々な方法で常に刺激することで活発化し、いつまでも衰えないことにつながります。

ビジュアル化と連想

情報はビジュアル化(視覚化)すると印象が強くなりますので、記憶し易くなります。あなたは同じ情報を「実際に自分の目で見た」「テレビで見た」「新聞(又は雑誌)で読んだ」という場合、どれが一番印象に残りますか?

聞くまでも無く一番印象に残るのは「実際に自分の目で見た」場合で、以下「テレビで見た」、「新聞(又は雑誌)で読んだ」の順になるでしょう。そして脳に長期記憶となって残るのも多分この順序です。

例えば既に結婚して子供もいる様な年代の人で、小学校の時の教科書に書いてあった文章を覚えている人などいないはずです。しかし同じ小学生の時に友達とよく遊びに行った公園の風景は、何十年も昔のことでも鮮明に覚えていませんか?

これはよく友達と遊びに行った公園の風景は、情報が脳のキャンバスにあたかも写真の様になって残っているからです。つまり情報がビジュアル化されているわけですね。

この様に一旦脳のキャンバスにビジュアル化されて保存された情報は、簡単には忘れません。

しかも考えてみてください。

この子供の時に遊んだ公園の例の場合、その中には広場、芝生、木立、花壇、ベンチ、ブランコ、滑り台、シーソ、走り回って遊ぶ子供、それを見守るお母さん等々非常に多くの情報が含まれています。

もしそれを言葉として暗記して、しかも何十年もその記憶を保持しようと思うと、大変な努力を必要とします。それを一枚の写真の様にまとめることで、簡単に記憶として保持出来るのです。これが情報のビジュアル化による記憶保持のメリットです。

実際私達の周りには言葉を絵やイメージに置き換えて記憶出来る人がいます。例えばお店の店員などで、一度聞いたお客さんの名前と顔を絶対に忘れないという人は珍しくありません。

ではこの人達は常人と違う抜群の記憶力を持った人なのでしょうか?

いえ違います。

この人達はお客さんの名前、顔の特徴などの情報を個別に覚えるのではなく、それを1枚のキャンバスに描いて記憶しているのです。そして思い出す時はそのキャンバスの必要な場所を見に行きます。

あなたが子供の時に遊んだ公園の「ベンチの色は何色だった?」と聞かれると、頭の中のキャンバスに描かれた風景を見て「黄色だった」と答えるのと同じです。

情報をビジュアル化することに優れた人は、壮大な物語もそれを大きなひとつのお城の中の風景としてビジュアル化して記憶し、思い出す時はそのお城の中を歩きながら思い出すという様なことも出来るそうです。

ビジュアル化は言葉だけではなかなか分かりづらい事を明確にして、それを記憶することが出来ます。情報のビジュアル化などと言うと非常に難しいことを言っている様に思われるかも知れませんが、実は私達は特に意識せずによく情報をビジュアル化しています。例えばメールを送る際に「絵文字」を使われる方は多いと思います。

あの絵文字は「嬉しい」「悲しい」「怒り」などをそれぞれ意味していますね。だからメールが嬉しかったことを伝える内容であれば、文章の最後に嬉しいという意味の絵文字を入れれば、それで自分の気持ちを文字で書かなくても伝えることが出来ます。

又、道順をおぼえる時なども、私達は無意識の内に周囲の風景と道路を1枚のキャンバスに描きながら覚えています。その場合の風景は三次元の風景で、二次元の地図情報ではありません。


特に情報のビジュアル化がし易いのは「大きい」「きれい」「とてもカラフル」「変わっている」「暴力的」などといった特徴的な情報です。

連想はあるイメージや言葉を引き金にして、いわゆる「芋づる式」に情報を思い出すことを言います。

先ほどの子供の時に遊んだ公園の例で言うと「そう言えばその公園の近くにお菓子屋さんがあった」「小さなお店だった」「何時もおばあさんが店番をしていた」「飴玉は10円だった」という様に思い出すのが連想です。


連想の応用でおぼえ難い言葉を、別の有名な言葉に置き換えて覚える方法もあります。例えば「カンパチ」という魚の名前がおぼえ難い時に「金八先生=カンパチ」として覚えるといった具合です。

ユーモアを使って連想する方法もあります。ユーモアを交えた連想に「連想ゲーム」という遊びもありますね。実際に情報のビジュアル化や連想の訓練を積めば、自分の記憶力がアップするのを実感出来ると思います。

情報のビジュアル化の訓練とはイコール「右脳の開発」です。人間の脳には左脳と右脳がありますが、「イメージ」、「空間パターンの認識」、「図形」など、情報のビジュアル化に必要な脳力は主に右脳にあります。ですから情報のビジュアル化が苦手な人は右脳のトレーニングが必要です。

右脳の働きが活発になると次の様なことが出来る様になります。

  • 将棋や碁の次の手が瞬間的に閃く
  • 本の速読が出来る様になる
  • 録音の速聴が出来る様になる
  • 同時に複数の仕事がこなせる様になる
  • 勘が鋭くなる
  • 集中力が増す

脳はトレーニングを続ければ肉体の様に歳を取りません。ですから中高年の人でもトレーニング次第で右脳を開発することが出来ます。

情報をビジュアル化することは記憶力アップにつながるだけでなく、ストレス緩和にも役立ちます。ストレスは明確な考えや記憶の妨げとなるものですから、前に進んで行きたい時にはこのようにイメージを使うことで、モチベーションをより高めることが出来るのです。

アロマテラピーとエッセンシャルオイル

臭い(ニオイ)と記憶は関連があることを知っていますか?例えば香水やオーデコロンの香りをかぐだけで、何年も前の記憶がよみがえることがあります。

香りを使った心身の癒しは「香を焚く」と言って、日本でも古くから上流階級の間で行われて来ました。源平合戦の物語に平家の公達(きんだち=貴族の子弟のこと)が戦場に赴く時に、兜の中に密かに香を焚き込めていたという話もありますね。

ただアロマテラピーという芳香療法は元々はフランス生まれで、日本で知られる様になったのは最近のことです。アロマテラピーはアロマセラピーとも言われていますが、これは英語読みですからどちらも正です。

アロマテラピーは植物の花や葉、樹皮などから抽出した精油(エッセンシャルオイル)を用いて、その香りで心身の癒しやその他様々な効果を期待する療法です。アロマテラピーは日本ではまだ正式に医療には取り入れられていませんが、ヨーロッパでは「メディカル・アロマテラピー」と呼んで、医療に取り入れている国もあります。


アロマテラピーというと「心身の癒し」というイメージが強いのですが、近年エッセンシャルオイルの香りが記憶力や集中力の向上にも効果があることが分かって来ました。そう、アロマテラピーには記憶を呼び戻したり物事に集中させる効果があるのです。

例えば予備校や会社で空調機からエッセンシャルオイルの芳香を流したところ生徒の成績が向上したり、社員の仕事に対する集中力が高まってミスが少なくなったという様な効果が報告されています。

スポーツ選手に競技開始直前に、エッセンシャルオイルの芳香を嗅がせるのも効果があるそうです。


アロマテラピーで使われているエッセンシャルオイルは、先に述べた様に植物の葉や樹皮、花、果実などから抽出した香りが使われていて、これには脳を刺激する成分が含有されています。当然のことですが「臭い」という私達の感覚も脳の指令によるものです。

エッセンシャルオイルの芳香はこの臭いを司る臭脳の部分に直接的な刺激を与え、更には記憶を一時的に保管しておく脳の中の「海馬」と呼ばれる部分をも刺激して、海馬に保管された短期記憶を長期記憶へと変える手助けをします。

エッセンシャルオイルの効用

アロマテラピーで使われるエッセンシャルオイルの種類は300種類以上あると言われていますが、その中でよく使用されているものとその効用をご紹介しましょう。

まずペパーミントとユーカリのエッセンシャルオイルはよく使われますが、このエッセンシャルオイルには集中力を高めて、心を目覚めさせる効果があります。

ローズマリーはスッキリした爽快感のある香りがします。この香りは脳を刺激し記憶力をアップさせる効果があります。例えばテストを間近に控えた学生の場合、このエッセンシャルオイルの香りがすると頭がスッキリして勉強がはかどります。

セージにも同様の効果があります。かつてはこのオイルをカプセルに詰めて飲んでいたと言われています。

その他脳に刺激を与えるエッセンシャルオイルにはバジルやローレルがあります。

ラベンダーはエッセンシャルオイルの中でもよく知られていて、広く親しまれています。爽やかで甘い香りが特徴でリラックス効果が期待出来ます。

最近記憶力が減退気味だと思っている人は、ミントやシトラス系の香りのオイルを選ぶ様にすると脳がより刺激されて記憶力が回復します。

胃が痛いなど記憶を阻むような健康上の問題がある場合は、ペパーミントオイルを吸入すると良いでしょう。脳を刺激すると同時に痛みを取り除き、体の調子を落ち着かせてくれます。

その他、松の香りがして森林浴をしている様に感じさせてくれるサイプレス、同様の森林浴効果があるシダーやジュニパー、それに頭をスッキリさせ、心に活力をあたえてくれるペッパーやシナモンなど香辛料系のエッセンシャルオイルも脳を刺激する効果があります。

エッセンシャルオイルの使用法

使用法はどんな種類のエッセンシャルオイルでも、コットンに数滴たらすだけで十分です。又、1種類だけでなく複数のオイルをミックスしたり、マッサージに利用したりしても良いでしょう。自分の香りの好みや利用目的に合わせてエッセンシャルオイルを選んで、それをうまく使いこなしましょう。

ただアロマテラピーをする時は心に留めておいてほしいことがあります。アロマテラピーに使われるエッセンシャルオイルは香水の様に薄められていない、凝縮されたままの植物エキスです。ですから取り扱いを誤るとリスクもありますので、次の様なことには注意しましょう。

エッセンシャルオイルまとめ

持病がある人やアレルギーがある人がアロマテラピーでエッセンシャルオイルを使用する時は、必ず事前に医師に相談しましょう。その香りが拒絶反応を引き起こすことがあります。子供が飲み込んだりしない様に置き場には十分に注意しましょう。エッセンシャルオイルの中には如何にも美味しそうな香りがするものもありますので、うっかりする幼児が飲んでしまうことがあります。


エッセンシャルオイルの原液は絶対に皮膚につけてはいけません。もし皮膚に直接つける時はあらかじめ香水の様に薄められているものを使用してください。但し、皮膚炎などの炎症や皮膚に異常のある時は香水でも使用してはいけません。


妊娠している女性の場合、香りによっては胎児に有害となる場合がありますので、必ず事前に医師に問い合わせるようにしてください。


初めて使用するエッセンシャルオイルはまず10倍に薄め、アレルギーテストをしてから使う様にしましょう。あらかじめキャリアオイルや蒸留水等で薄められているエッセンシャルオイルでも、目や唇、肛門などの粘膜部分、傷口付近には使用しない様にしてください。


オイルですので引火の可能性があります。従って、火気の近くでは使用しない様にしてください。開封後に保管する時はキャップをしっかりと締めて、冷暗所に保管する様にしましょう。

独創的、創造的になる

世の中に記憶力をアップするための記憶術と呼ばれるものはゴマンとあります。そしてその中には非常に独創的で、且つ創造的なものも珍しくありません。しかしどの様なユニークなものであっても、試してみると案外効果があることがあります。

いずれにしてもやってみようという心が大切です。この章では脳に刺激を与える為の、創造的且つ創造的な方法をご紹介しましょう。

脳は筋肉と同じで常に鍛えていなければ退化します。あなたが筋肉を鍛える時はいわゆる「筋トレ」をすると思います。では脳はどの様にして鍛えますか?

読書

脳を鍛える具体的な方法で誰にでも出来て、お金もそれほど掛からないのは読書です。たくさん読書をしてその内容を理解するのはそれだけでも「頭の体操」になります。ですからチャンスを見つけて出来るだけたくさん本を読みましょう。

但し、ここでお勧めする読書は普通の読書ではなく、速読と言われる高速読書です。

人間は普通に読書をしてその文字情報を理解する時は大脳の左側部分、すなわち左脳を使っています。一般的に人が読書をして文字情報を理解する場合、脳はその人が文字を初めて覚えた時からの慣れ親しんだスピードで文字を追っていき、そして脳の中でそれを理解しようとします。

しかし速読による場合は脳には慣れ親しんだスピードとは全く違うスピードで、情報がどんどんインプットされます。つまり脳の負担は非常に大きくなります。その結果左脳だけでなく従来は使っていなかった右脳が刺激されて活性化して来ます。

ちなみにこれは録音された情報を2倍速、3倍速で聴く、速聴でも同じことが言えます。

筋トレをする場合でも同じですが筋肉に与える負担が軽い時よりも、負担が大きい時の方が筋肉は鍛えられます。脳も同じで負担を掛けてやればそれだけ鍛えられます。

人間は通常自分の脳の10%も使っていませんから、少々負担を掛けてもパンクすることなどありません。

本を買うお金が無ければ公立の図書館へ行けば無料で嫌というほど読書が出来ます。更に速読術が出来る様になったら本屋さんの立ち読みでも、1時間もあれば数冊の本をタダで読むことが出来ます。

この場合の読書の目的は別に何かの専門家になるわけでも無ければ、受験勉強の為に読書をしているわけでもありませんので、本のジャンルは何でも構いません。

自分が興味を持って最後まで読める本を選んで、毎日最低でも1時間は読書をする様にしてください。フルタイムで仕事をしている人は昼休みに、あるいは通勤中に電車やバスの中で読みましょう。

色(カラー)には右脳を活性化する効果があります。ですから自分の部屋は出来るだけカラフルにしましょう。と言っても別に部屋の中をサイケデリックな色にしなさいと言っているわけではありません(笑)。

例えばカーテンや壁紙の色を明るいものに変えたり、動物が好きな人は水槽を買って来て、様々な色の熱帯魚や金魚などを飼うなどして、室内をカラフルにします。

最近脳を活性化する「大人の塗り絵」に人気があって、楽天市場などでも通信販売しています。これも色の効果によって右脳を鍛えようという目的です。とにかく様々な色で室内を飾ることで、それを目で楽しみながら脳を鍛えます。

音楽を聴くのも脳を活性化する効果があります。音楽を使って脳を活性化する方法は「音楽療法」と言われ、受験勉強中の受験生などに利用されています。但し、音楽療法に使われる音楽は普通の音楽CDなどとはちょっと違います。

例えばお馴染みのモーツアルトの名曲が普通のスピードの2倍速~32倍速で収録されていたり、曲の中に自然音がさりげなく入っていたり、脳を刺激するサウンドだけを集めて音楽化したりという様にちょっと特殊な音楽です。

もちろんその様な脳を刺激する特殊な音楽ではなく、普通の音楽を聴くのも脳をリラックスさせて記憶力を増す効果があります。例えば企業のオフィスなどに流れているBGM(バック・グラウンド・ミュージック)などは、このリラックス効果を狙ったものです。

BGMは普通に流行している音楽をそのまま流しません。流行の曲を流すとその音楽の方が気になってそちらに神経が集中してしまい、仕事の効率が下がるからです。ですからBGMの曲というのは何処かで聴いた様なメロディはありますが、全体としては言わば国籍不明の音楽になっています。

ゲーム

様々なゲームをするのも楽しみながら脳のトレーニングが出来る良い方法です。

ゲームは脳細胞を刺激してくれます。例えば将棋や碁のプロは勝負が終わった後、最初からの盤面を再現することが出来ますね。あれは彼等の右脳が人一倍活性化している為、盤面を全てビジュアルに記憶しているから出来るのです。

市販の家庭用ゲームソフトでも脳は活性化します。反射神経が鈍った高齢者などには反射神経が要求されるシューティングゲームは難しいのですが、ストーリー性のある RPG(ロール・プレーング・ゲーム)やウォーゲームなら出来ますね。

最初から高齢者の脳を活性化することを目的として作られたゲームもたくさん市販されています。内容は高齢者が子供の頃から慣れ親しんで来た遊びや記憶している唱歌などをベースにしたもので、特に説明を聞かなくてもすぐにプレイ出来る様に作られています。この様なゲームは介護現場などにも取り入れられている様です。

大勢の人と交流するのは脳の活性化には大きな効果があります。人間は元々群れを作る動物ですので群れから孤立すると、確実に脳が退化して行きます。

例えば現役時代営業マンとして立て板に水の話術を誇った人でも、引退してほとんど家の中に篭っているとだんだんに言葉が上手く出てこなくなり、会話が下手になります。

これは脳の回転が鈍くなって次の言葉がすぐに出て来なくなっているからです。ですから友人知人には連絡を取って会う様にしましょう。それも同じ人ばかりでなく出来るだけ多くの人に会います。

住んでいる地域にイベントなどあれば、興味のあるものに参加してみましょう。遠くに住んでいて簡単に会えない人にはメールや手紙を送れば、きっと喜んでくれるでしょう。人と会って会話をすることは脳を刺激し、同時にリラックスさせる効果があります。

又、活動的になれば自然と心はシャープになり、集中力も養われます。

以上お話した様な様々な方法で左脳、右脳を刺激すると心がオープンになり、記憶力アップにつながります。今までに経験したことが無い様な方法でも恐れることなく、新たな事に目を向けて探求してみましょう。例え見慣れない聞き慣れないユニークな方法であっても、様々な方法を試してみるのは記憶力をアップさせる為に大切なことです。

不要な繰り返し作業をなくす

これまでにもご説明して参りました様に、記憶力をアップさせるには様々な方法があります。中には「どうして思いつかなかったのだろう?」と言いたくなるほど、非常にシンプルなものもあります。人間は年齢と共に記憶力が落ちて行くのは生理的現象ですから仕方のないことですので、それをくよくよと考えても仕方がありません。

最近はアルツハイマー病がいろいろ話題になりテレビドラマなどにも取り上げられますが、各地の病院へ「自分は最近物忘れがひどくなったが、ひょっとしたらアルツハイマーではないだろうか?」と言って、診断を求める人が増えているそうです。

その様な状況に合わせて病院側でも「物忘れ外来」の看板を上げて、診察を求める患者を受け入れているクリニックや大学病院などもあります。ただ実際には病的な健忘であるアルツハイマー病の患者はそう多くは無く、患者の多くは加齢による正常な健忘や一過性健忘、甲状腺機能低下による健忘などだと言われています。

一過性健忘というのは高齢者に多い症状で、特別な理由も無く、数時間から24時間位続くアルツハイマーの様な症状です。ちなみに単なる物忘れか痴呆症かを見分ける場合「今日の朝食で何を食べたか」をおぼえていないのは正常で、「今日の朝食を食べたかどうか」をおぼえていないのは痴呆症の疑いがあると言います。

その他の物忘れでも「人の名前を忘れる」「漢字を思い出せない」「買物に行ってもよく買い忘れをする」「道順を忘れる」などは、ほとんどの場合良性の健忘ですから心配はいりません。


一方、「数時間前に会った人が思い出せない」「会話の中で同じ話を繰り返す」「相手の言葉の意味が理解出来ない」などの症状は、先ほどの「朝食を食べたかどうか」と同じ悪性の健忘です。

ところでアルツハイマーというと「高齢者」というイメージが強いのですが、最近は若年性のアルツハイマーが問題になっています。

例えば20代でも次ぎの様な生活をしている人は、若くてもボケる可能性が高いと言われています。

  • 友人は少ないが特に欲しいとも思わない
  • 食べ物の好き嫌いは他人より多いと思う
  • 融通が利かず時々「お前はつまらないことに意固地になる」と言われる
  • テレビはただぼんやり見ているだけ、新聞は番組欄以外ほとんど読まない、家の中で考えることはしない
  • 特に趣味は無く、スポーツはするのも見るのも嫌い
  • 仕事ではいわゆる「指示待ち人間」で自分からアイデアを出したり、創意工夫をしたりすることは無い

この中でひとつでも思い当たることがある方は注意しましょう。

将来ボケないまでも脳の退化は他人よりも進んで行く可能性があります。全部思い当たる様ならもう立派なアルツハイマー予備軍ですので、早急に生活態度を変えましょう。


ただどの様に注意しても加齢による記憶力の減退は避けられません。加齢による物忘れはまず直近の出来事をよく忘れる様になります。続いて比較的近い過去の出来事がなかなか思い出せない様になり、最後は昔子供の頃に習った小学唱歌など古い記憶も思い出せなくなります。

この様な状況が病的な健忘の場合は医師の治療が必要ですが、加齢による物忘れならばテクニックで何とかすることが出来ます。人間の記憶というのは仮に全部おぼえていると言っても元々かなり不正確なものです。よく犯罪などの証言で証人の証言に食い違いが生ずるのはその為です。ですから「人の名前がなかなか出て来ない」程度の物忘れは、それほど神経質になる必要はありません。


ところであなたは必要無いのに、同じ事を何度も繰り返してしまうことはありませんか?その様なことはその事が毎日の習慣になってしまっている場合によく起きます。

例えば外出した直後に自分が玄関に鍵を掛けたかどうか思い出せないなどという経験は、誰もが1度や2度はしているはずです。それは外出する時の玄関の施錠、電気を消す、ガスを止めるなどという行為自体が既に習慣になってしまっていて、その行為はもはや感覚記憶としてしか脳に残らないからです。

感覚記憶というのは人間の脳が最初に認識する記憶で非常に雑多な記憶ですが、そのほとんどは1秒程度で忘れてしまう記憶です。つまり「最初から覚えていない」と言ってしまっても良いほどの短い記憶です。

玄関の鍵が心配になったりガスを止めたかどうか分からなくなると、その確認の為に慌てて引返すことになりますが、その労力と要した時間は全くの無駄です。

最近はこの様な人の為に「最後に鍵を掛けた時間」を記憶する鍵もあるそうですがそれはさておき、このような繰り返し作業をストップさせるには、現在自分が行っていることをしっかりと脳に認識させる必要があります。

出かける前に部屋の電気を消す、アイロンを使った後はコンセントを抜くなど、行動としてはほとんどが些細な事ばかりです。ですからつい習慣的に行動をしてしまって後になって、「あれっ」ということになります。

習慣的に繰り返してしまわない為のコツといsて、出かける際は玄関で必ず1度立ち止まり、家を出る前にすべきことを確認しましょう。その時にいわゆる「声を出しての指差し確認」が大変有効です。

「声を出しての指差し確認」というのは電車やバスなど公共交通機関の運転士がよくやっているので、皆さんもご覧になったことがあると思います。運転士がいちいち指差しながら「右良し」「左良し」などと大きな声で言っているあれです。

人間の左右の目の視野はそんなことをしなくても180度以上あるのでちゃんと見えるのですが、左右の確認という日常茶飯事の行動が習慣的にならない様にしているのですね。

あなたも外出する時は運転士さん達と同じ様に、「声を出しての指差し確認」をしましょう。「鍵良し」「電気良し」「ガス良し」と言った様な要領で、声に出して確認します。

そう言えば以前テレビの車のCMか何かで、お母さんと子供がこの確認をするシーンがあった様な気がします。もっともこれも不正確な記憶のひとつですが・・・・・。

繰り返し唱えること、これが後できちんと思い出すための一番の方法です。しっかりと脳に記憶させるには劇の台詞を暗唱する様に、情報を頭の中で繰り返し脳に刻み込む様にしましょう。

大事なことなのにそれが習慣的になって脳が記憶しなくなったなどということが無い様にするには、何か大事な行動をする時はそのことに集中し注意を向ける様にします。他に考え事などをしているとそちらに心が行ってしまいますので、出来るだけ雑念は取り除くようにします。

気が散ってしまうとなかなか脳が記憶してくれません。集中するのが難しいと言う人もいますが、注意を向けてその行動を頭に刻むと、かえってそれ以外の不必要なことが取り除かれます。どんな時でも手元で行っていることに目を光らせましょう。

集中することは記憶力アップに不可欠です。しょっちゅう物忘れしてしまうのは、その事に集中していない為です。又、仕事が多くて忙し過ぎたりするとそれがストレスとなって、気が散ってしまいます。

注意が持続で出来なければ必要なことも覚えられず、記憶力アップは望めません。不必要な行動を無くすという意味では片付けをすることもとても大切です。

ここで言うところの「片付け」というのはキレイに掃除をするという意味ではありません。掃除をすることは「衛生上」の観点からはもちろん重要な意味がありますが、「記憶」という観点からは部屋が汚れているかどうかは関係ありません。

記憶という観点からの片付けというのは「整理整頓」のことです。部屋がきれいに片付いていれば必要なものが目の届く範囲にあるのがすぐ分かりますから、どこにあるのかをいちいち記憶する作業が省けます。

片付ける時は関連するものは出来るだけ同じ場所にグループを作る様にします。例えばパソコン用品ならパソコンの周りに置くという具合です。又、頻繁に使う物はグループが違うものでも1ヵ所に全て揃えるようにしましょう。

例えばボールペンなど書く物は全て同じ引き出しにしまうか、又はひとつのペン立てにまとめておけば使う時に便利ですし、それに紛失することも少なくなります。

人の名前、電話番号、アドレスなどの重要情報は1ヵ所に保管し、すぐに見つけられる様に名刺台帳などに分類しておきましょう。記憶を混乱させない為にも物を使った後は元あった場所に必ず戻す習慣をつけます。

毎日繰り返して行うことはチェックシートを作って壁などに貼っておきましょう。これは職場などではよく行っていることですが、それを自宅でも応用します。

仕事ではよくすべきことを全てリストアップしておき、それぞれの仕事が終わったら線で消して行く方法でチェックしているはずです。

高齢者の場合様々な薬を飲んでいる方が多いと思いますが、薬というのは「毎食前」「毎食後」「朝食後」「夕食後」「食後○時間以内」など、もっとも効果的な服用時間がありますね。そしてその服用時間は必ず「食事」が基準になっています。

しかし何種類もの薬を飲んでいる人はうっかりしてよく飲み忘れてしまいます。この様な薬の服用時間などは食事の時に座ればよく見える場所に大きな字で、「薬を飲むのを忘れない様に」と注意書きしておくだけで、飲み忘れがグンと少なくなります。1度飲んだことを忘れてしまってダブって服用することも防げます。

他のことと違って薬は飲み過ぎると薬中毒を起こすリスクがあります。薬の服用時間以外でもチェックリストを作った時は、いつも目につく同じ場所に置くようにしましょう。

子供がいる人は子供が毎日持って行くバッグなどは正面玄関のそばに置く様にすれば、出かける際に子供が忘れることもなくなります。

お弁当を持って行く子供がいる場合は、作ったらすぐにバッグに入れるようにしましょう。ちょっとした事ですがこの様にしておけば忘れ物が少なくなります。

必ず時間内にやり遂げなければいけない仕事をする場合は、まずするべき仕事は最初に全てチェックした上で、もっとも重要なものから取り掛かります。又、仕事するのに必要となるものも最初に全て揃えておきます。

最初にもっとも重要な仕事から取り掛かるのは、万が一時間が足りなくなった時にもやり残しによるリスクを小さくする為で、これは受験の心得の「配点の多い問題を優先して解く」ということにも通じます。

あらゆることが同時進行している状況では、記憶力だけに頼るのは難しくなります。重要なことを忘れない様にするにはカレンダー付きの手帳を利用して、大切な情報を書き留めておきましょう。

どんなに記憶力の良い人でも人間は全てを覚えることは出来ませんから、それは手帳に書いて補います。

電子手帳を利用するのも良いと思います。電子手帳はスケジュールなどの記録だけでなく名刺情報の保存など多彩な機能がありますので、持っていれば紙データはほとんど持つ必要がありません。

携帯電話の記憶装置も利用出来ます。最近の携帯電話は昔の電子手帳レベルの記憶装置を持っています。又、外部記憶装置も使えてパソコンの情報なども取り込めますので、ちょっとした電子手帳代わりに使えます。

未解決の問題は後回しにせずに、出来るだけ早く取りかかりましょう。現代の世の中は変化が早く昭和の初期なら10年かかった変化が数ヶ月で起きる様な時代です。ですから未解決の問題を先延ばしにしていると状況が変わって、ますます問題解決が難しくなります。

同じ行動を繰り返すという行為はそれが頻繁になるとボケ(痴呆)の心配が出て来ます。

ボケ防止法

先にも述べましたがボケは高齢者特有の症状では無く、20~40代の現役世代でも現れることがありますので油断は禁物です。ではどうすればボケを防げるのでしょうか?

特にその危険性が高くなる中高年を対象に、誰でもすぐにでも出来る簡単なボケ防止法をご説明しましょう。

定年後にすることを在職中から決めておく

定年後何もすることが無く漫然と日を送っている人は、まず何をするにも意欲が無くなります。その結果外部からの刺激が無くなった脳は運動不足による血流の減少とも相まって急速に衰えていきます。

ですから「定年になってからゆっくり考えよう」では遅過ぎるので、定年が近付いたら定年後の毎日をどう過ごすか決めておきましょう。

運動する

自分の体力に合わせた運動をします。若い人と違って中高年の場合は自分が考えているよりも体力が低下していますので注意してください。

運動は走ったり飛んだりするばかりが運動ではありません。体力に自信が無い人や長年運動から遠ざかっていた人はウォーキングを毎日30分程度を目安に続けましょう。

だいたい心拍数が100~110程度になれば運動としての効果があります。

日記、ブログ、小説などを書く

何かを書くということは情報のインプットとアウトプットが行われるということです。脳に一番良いのは情報のインプットとアウトプットを頻繁に行うことで、これを続けている限り脳はめったにボケません。

この場合の日記はもちろんブログも小説もそれでお金儲けをするのが目的ではありませんので、自分の書きたいと思うことを遠慮無く書きましょう。

とにかく何でも良いので書くということが大事なのです。

出来るだけ人と会話をする

会話をするということはそれ自体が脳を強く刺激しています。又、会話を続けるためにはそれなりの情報が必要ですので、自然に読書やインターネットなどで情報を得る努力をしますが、これも脳を刺激します。

出来るだけ外出する

人間の脳にインプットされる情報の内、その80%は視覚から得られると言われています。外出するということは目から新しい情報がひっきりなしに入ります。

又、外出して繁華街などを歩き回ると視覚だけでなく聴覚やその他の五感も刺激され、脳はその情報を処理する為にフル回転します。

外出は運動にもつながりますので、時間を見付けて出来るだけ外出をする様にしましょう。

何か目的を持つ

これは働いている現役世代の人の場合は働くことが目的ですから特に問題は無いのですが、定年等でリタイアしている人の場合はボケ防止に重要な意味を持ちます。

仕事を失った人が毎日を無為に過ごしていると頭脳も肉体もどんどん錆びていきます。ですから何でも良いので目的を持ちましょう。

例えばボランティア活動でも良いですし、何かの資格取得を目標にしても構いません。世の中には70歳で超難関の司法試験や公認会計士の試験を受ける人もいます。もちろん健康ならば収入を得て働くのも良いことです。

音読をする

私達の脳はコンピュータと同じ様に「インプット」「処理」「アウトプット」の機能を持っています。通常の黙読はインプットと処理だけでアウトプットがありません。音読をすればアウトプットが加わります。

タバコは止める

タバコが記憶力の減退に直接つながるというデータはありませんが、健康に良くないのは確かです。あらゆることは体が健康であることが基本ですから、タバコは止めるに越したことはありません。


この他にも脳を刺激してボケを防止する方法はいろいろありますが、何度も申し上げている様に脳は常に使っていなければ退化します。私達が生きている限り脳はどんどん酷使しましょう。それでも使っているのは脳全体の10%以下なのです。

特に一般の人の場合論理的な思考を司る左脳は使っても、創造性や芸術的思考を司る右脳はあまり使っていません。ですから定年退職を機に論理的思考が中心のビジネスの場ではあまり出来なかった、右脳を鍛えるトレーニングをするのも良いのではないでしょうか。

右脳は将棋や碁をしたり、絵画を見たり描いたりすることでも鍛えられます。

ニーモニック(覚え歌・語呂合わせ)

日本には昔から暗記をする時に使う「覚え歌」と呼ばれている記憶術があります。「語呂合わせ」とも言います。

この覚え歌や語呂合わせの様な記憶術は世界中で誰もが考え出す様で、英語圏では同じ記憶術を「ニーモニック」と呼んでいます。

ちなみにニーモニックという言葉はコンピュータのプログラミングをする、ソフトウェア技術者の間でもよく使われます。

実際にコンピュータにプログラムを実行させているのは「機械語」と呼ばれる数字の羅列なのですが、そのままでは覚え難くプログラミングし難いので、それを覚え易い記憶記号に置き換えてプログラムを作ります。この記憶記号がニーモニックです。

ニーモニックで書かれたプログラムをコンピュータに読み込ませる時は、「アセンブラ」と呼ばれるプログラムがそれを今度はコンピュータが読める機械語に翻訳します。ニーモニックを使うと脳のメモリーバンク内の情報をキープし易くなり、結果として記憶力がアップします。

中にはおぼえるのがそう簡単でないものもありますが、多くのニーモニックはきちんと効果があることが立証されています。人の名前などを覚える際はこの方法を用いると集中出来、よりたくさん記憶出来る様になります。

ニーモニックは意味の無い数字の羅列の様なものを記憶する時に特に効果があります。

例えば私達が必ず学校で習うものに「円周率」があります。円周率は通常は「3.14」と覚えていますが、この円周率は割り切れない数字なので実際は延々と数字が続きます。それをおぼえるのに例えば次の様なニーモニックが使われます。

3 1 4 1 5 9 2 6 5 3 5 8 9 7 9 3 2 3 8 4 6
1つ 1つ

これで小数点以下20桁ですがこのニーモニックには発展形があり、最大では小数点以下1,000桁までおぼえることが出来るそうです。

円周率と言えばつい最近いわゆる「ゆとり教育」で盛んに取り上げられましたね。このゆとり教育とは2002年から文部科学省が実施した新しい子供の教育指導方針でしたが、その後この方針によって日本の子供の学力が低下しているということが大問題になりました。

ゆとり教育では様々な教育の基準が簡素化されましたが、その中で従来「3.14」とおぼえていた円周率は「3」とおぼえれば良いとされました。

ゆとり教育は2009年に理数系の授業時間が増加したのを皮切りに現在は実質的に廃止されていますが、この円周率を「3」としたことは、ゆとり教育を批判する人達のシンボル的な攻撃材料となっています。

ゆとり教育そのものについては功罪があり一概に批判ばかりは出来ないのですが、円周率が3で良いとしたのは明らかに行き過ぎだと思います。

こういうことをすると他に良い部分がたくさんあっても「一時が万事」の一言で、全て帳消しにされてしまいますね。


余談はさておきニーモニックは数字を記憶する時以外にもいろいろ用いられています。例えば受験生に昔から親しまれているのは、元素記号を覚える時の「水兵リーベ僕のお船(H・He・Li・Be,B・C・N・O・F・Ne)・・・・・」ですね。

このニーモニックは詩の様なスタイルになっていますが、この様に「韻(いん)」を踏んでいると言葉の調子が良いので、とても覚え易くなります。

この様な韻を踏んだニーモニックは英語でもあります。アメリカの小学校では先生が「I before E, except after C (C の後を除いて I は E の前)と教えます。

これはスペルの規則性を教えるものです。例えば「Friend(友達)」、「Science(科学)」など、英語には I が Eの前にあるスペルが多いですね。でも「Receive(受ける)」などの場合は E が C の後になっています。それを先生は「C の後を除いては・・・・・」と教えているのです。

この様に教えれば子供でもおぼえ易く、単語の関連付けもし易くなります。

「I before E, except after C」を大きな声で言ってみてください。とても言葉の調子も良いのが分かります。これはニーモニックの基本に忠実に韻を踏んで作られているからです。

ニーモニックを作る時は5と7を基本とします。この5語と7語から成る言葉はとてもひびきが良いので、俳句や短歌(和歌)、中国の漢詩などの基本になっています。

俳句は「5、7、5」、「短歌(和歌)は「5、7、5、7、7」、漢詩は「五言絶句」又は「七言絶句」と言って、漢字五語か七語で出来ています。

次の漢詩は七言絶句の漢詩です。

朝辞白帝彩雲間:朝に辞す白帝彩雲の間
千里江陵一日還:千里の江陵一日にして還る
両岸猿声啼不住:両岸の猿声啼いて住まざるに
軽舟已過萬重山:軽舟已に過ぐ萬重の山

有名な漢詩で日本の学校の教科書などにも出て来ますので、皆さんも多分何処かでお聞きになったことがあるのではないでしょうか?


ニーモニックは言葉だけでなく絵やイメージを言葉に組み込む方法もあります。特に子供に話をする際にこれを用いると理解が早いと言われています。

少し意味が分かり難いかも知れませんが、例えば子供に12月までの月を覚えさせるのに、1月は「雪だるま」、8月は「海水浴」などの絵を組み合わせて覚えさせたり、お母さんが替え歌(遊び歌)を作って歌として覚えさせるという様な方法です。

子供はこれが得意ですぐに自分のものにしてしまいます。テレビの子供番組などでもよくこの方法を使っていますし、幼稚園の先生、保育園の保母さん、それに小さな子供を持つお母さんもこの方法を使って、子供にいろいろなことを教えている人は多いですね。

この絵やイメージと結び付けて記憶する方法は子供の教育だけでなく、受験勉強にも効果があると言われています。その為に必要な教材なども開発されています。

絵やイメージを使うニーモニックの応用として、全ての情報を部屋など自分のいる環境に関連付ける「場所法」というのもあり、これは人前で暗記してスピーチをする際などに役立ちます。

スピーチのストーリーを今見ている景色と結び付けることで、覚え易くするのです。自分の指にそれぞれの事柄を当てはめる「片手指法」や「両手指法」も場所法のひとつです。


ニーモニックは声を出して唱えることでより覚え易くなります。口の中でボソボソと言っていたのでは駄目です。

大きな声でそれも大勢で唱和するのが一番効果が上がります。あなたは小学校で九九の公式を習う時に皆で大きな声で「ににんがし(2×2=4)」「にさんがろく(2×3=6)」という様に唱和したと思います。

あれはそうすることが一番よく覚えることを先生が知っているので、皆で大きな声で唱和する様に指導しているのです。又、この時唱和する「ににんがし(2×2=4)」、「にさんがろく(2×3=6)」などの公式は、声に出してみるとリズム感があってとても調子がいいですね。

九九の公式を考えた人は多分覚え歌(ニーモニック)を意識して作ったのだと思います。

ところで暗記が記憶とほぼ同一のものだということはご存知ですね?この暗記の中に「メタ暗記」と呼ばれるものがあります。

記憶というのはどの様な方法を使っても完璧に記憶することは難しく、必ず記憶の一部が欠落します。その場合、どこが記憶されていてどこが欠落しているのかを知るのがメタ記憶です。このメタ記憶が鍛えられている人というのは自分の記憶の欠陥部分が分かりますので、それをすぐに補うことが出来ます。

チャンキング

長期記憶と短期記憶の章でも少し触れましたが一般的に私達の記憶は不安定な部分があり、常に頭に入れておくべき大事な情報なのに忘れてしまうということがあります。

それに一応は記憶している情報も完全に覚えていなくて、ところどころが欠落していることもあります。

手帳などに書き留めておいて忘れた時には取り出して見る様にすれば良いのですが、何時も手帳を持ち歩いているわけではありません。やはり記憶しておいた方が便利な情報はたくさんあります。

その様な情報を覚える場合は、チャンキングのテクニックを使いましょう。チャンキングというのは数字や文字などを、ある決まった区切りでそれぞれ一塊として捉えて記憶するテクニックです。


チャンクを作る時はチャンクは一般的に数字なら7個前後、文字なら6個前後、単語なら5個前後とします。

これは私達の短期記憶が「7±2」の情報しか保持出来ないからです。この7±2と言う数は心理学の世界では「マジカルナンバー」と呼ばれています。

チャンキングというのは特に目新しいものではありません。私達は常日頃あまり意識せずにこのチャンキングの技術を使っています。

例えば電話番号です。電話番号など数字の情報はいくつかの区切りにすると覚え易くなります。

私達が電話番号をプッシュする時は「0123456789」という様に数字を連続してプッシュします。電話番号というのは本来はこの様に数字が連続して並んだものです。

しかしこの電話番号を記憶しようとする時、そのまま「0123456789」と覚えようとすると簡単には覚えられません。

そこで私達はこの電話番号を紙に書く時は普通「市外局番-局番-番号」の順に「-(ハイフォン)」で区切って「012-345-6789」という様に書きますが、電話番号を覚える時もハイフォンで区切った通りに「012、345 の 6789」というふうに覚えます。

ここで大事なことは単に数字を 012、345、6789 と分けて覚えたのではなく、それを 012、345 の 6789 と数字の間に「の」を入れて覚えていることです。

一度声を出して唱えてみてください。数字の間に「の」を入れるだけでリズム感が出て来て、数字だけの羅列よりも覚え易いはずです。このリズム感を持たせるというのは記憶をする時にとても大事なことですから、ぜひ覚えておいてください。

この例の電話番号の0123456789はそのままですと 10チャンクになっています。ところがこれを「012」、「345」、「6789」とグループ化すると3チャンクになります。

当然10チャンクのまま覚えるよりも、3チャンクにした方が覚え易いので、私達が電話番号を記憶する時は意識せずにチャンキングをしているのです。この様にチャンキングすると覚えるのにさほどエネルギーも要さず、さらに全部の数字をひとまとめで覚える必要もないので、丸ごと覚えるよりも楽です。

又、チャンキングを使うと数字のリズムや語呂などが発見しやすくなります。これを別の情報にリンクさせれば更に覚え易くなります。

例えば前章のニーモニックのところで使った円周率をもう一度見てみますと、円周率の「3.14159265358979323846」はこのままだと21チャンクです。それをそのまま記憶しようとすると普通の人ではかなり困難です。そこでこれを「314」、「159」、「265」、「358」、「979」、「323」、「846」と 3桁毎に区切ると7チャンクになります。

つまりチャンクは1/3近くになったので、かなり覚え易くなりましたね。実際桁数の多い数字を記憶する時に、それを数字のままいくつかのグループに分解して記憶する人はいます。

この様なチャンキングのテクニックはパターンを作っておけば、他の情報にも活用出来ます。慣れた人はこの様にして記憶しているチャンクを増やしていって、その結果例えば上記の円周率なら1,000桁も記憶します。

チャンキングは文字にも使える

例えば複数の人に連絡を取る必要がある場合などは、ローマ字で名前を書いた場合の最初の1文字が、同じ文字で始まる人をひとくくりにしておくと良いでしょう。

買い物をする際も買う物が決まっている場合はあらかじめリストアップし、お店の名前と併記してまとめておきます。こうすればショッピングモールなどでも、同じ通路を何度も通って行き来しなくてもお店毎の買い物は一度で済みます。

別の物を買うのにぐるぐる歩き回ったあげく買い忘れがあったことに気付いて、又、同じお店に戻ってきてしまう、こんなことも無くなります。店内の品物の配置を全て把握出来ていない場合にも、こうしておけば余計に歩き回る必要がなくなり時間を節約出来ます。

チャンキングは漢字を覚える時にも応用出来ます。例えば漢字には「偏(へん)」や「冠(かんむり)」がありますのでそれを基準にチャンキングしたり「お金に関係のある漢字には貝偏が多い」「衣類に関係する漢字には衣偏が多い」などの基準でチャンキングします。

記憶術の基本的な手法「分割」と「組立」

膨大な量の情報を記憶する時にそのまま記憶しようとすると覚えられないので、情報をいくつかに分割して記憶し、それをアウトプットする時に組み立て直そうという手法です。

チャンキングというのは正にこの分割と組立の手法なのです。

分割と組立などというと何か非常に難しいことを言っている様に思われるかも知れませんが、実は昔の人は皆その様にして長い物語や歴史、聖書、仏典などを今日に伝えて来ました。

今日私達は情報を書物として記録するのはもちろんのこと、インターネットやパソコンなど様々な手段で情報を記録し、それを他の人に伝えています。しかしそれ等は全て近世になってから開発された印刷技術やエレクトロニクス技術を利用したもので、中世以前にはそんなものはありませんでした。

あったのは粘土板や羊皮、パピルス、木簡(もっかん)、竹簡(ちくかん)、布などでしたが、これ等は製本に適さなかったり変質したりかさ張ったりして保存がし難く、大量の情報の長期保存には適しませんでした。

ですからその頃の人達は膨大な量の物語や歴史、聖書、仏典などもその多くは、記憶することによって他の人に伝えて来ました。

この様に口から口へと伝える情報伝達手段を「口伝(こうでん)」と言いますがこの口伝をする際の記憶の手段に分割(チャンク)と組立のテクニックがフルに使われていたと言われています。

聖書や仏典の様な高尚な情報だけでなく、今日私達が聞かされている民話などの庶民文学には、昔は高価だった紙など買えなかった貧しい人達が語り部として今日に伝えて来たものが数多くあります。

「千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)の様な超長編の物語は、1人ではなく複数の語り部が記憶したのかも知れませんね。

今日昔から伝わる民話の中には、同じ様なストーリーの民話が遠くはなれた地域にそれぞれ存在することは珍しくありません。例えば日本人なら誰でも知っている「浦島太郎」の物語は、世界各地に類似の話があります。

但し、主人公が乗って行く動物は亀ではなくヤギやイノシシ、それに鯉やエイだったりします。この様に類似の話が世界中にあるのは民話が口伝えに広がって行くうちに、それぞれのご当地に合った話に変質していった為だと言われています。

身の周りの環境を利用する

昔の人は何か覚えておかなければならない事がある時には、忘れない様に指に紐を結んでいたそうです。結んである紐を見れば、何かまだ終わらせていない仕事があることを思い出せるからです。落語にも出て来ますね。

この様な「忘れない為の工夫」は世界中にあります。ヨーロッパで多い方法は指に紐の代わりに、ハンカチの角に結び目を作っておく方法だそうです。

ハンカチを取り出した時に「あれ、何か忘れているかな?」と思わせる為ですね。それがハンカチを持つ習慣が無かった日本では「指に紐を結ぶ」になったのでしょう。

現在は手帳や電子機器のおかげで、忘れない為に指に紐を結んだりハンカチの角に結び目を作ることは無くなりましたが、しかし実際は今でも必要なのではないでしょうか?

筆者などは時々手帳や携帯電話などに書いたメモを見ることを忘れることがあります。メモしておいても何にもならないわけですが、あなたはどうですか?

この様にいくら携帯電話や電子機器が発達してもそれだけに頼ることは出来ません。身の回りの環境には記憶を助けるものがたくさんありますから、それらを使って忘れない工夫をしましょう。

次に日常生活など身近な場面でよく忘れるものについての「忘れない工夫」をいくつかご紹介します。

①クリーニングに出した服を忘れずに取りに行く為の工夫

クリーニング屋から服を取って来なくてはならない時は、ハンガーを寝室や玄関のノブにかけておくと、忘れずに服を受け取ることが出来ます。

②洗濯を忘れない工夫

クリーニングではなく自宅での洗濯を忘れない工夫です。

下着などの洗濯は全部お母さんや奥さん任せの人は良いのですが、1人暮らしの独身者の場合は下着の洗濯を忘れていて、風呂からあがって着替えようとしたらキレイな下着が1枚も無いということがあります。

基本的にはズボラな性格の方に多いのですが、ただこれは独身男性だけでなく女性でもそういう方は結構いるそうですね。

洗濯を忘れない為の工夫は簡単です。それは洗濯をする曜日を決めておくことです。そしてその日は職場や学校から帰ったら必ず洗濯をします。

その為には洗濯機は浴室の脱衣場に置いて、入浴している間に洗濯機を廻しておくのが良いと思います。

その日がたまたま出張などで自宅に帰らなかった場合は翌日が洗濯日です。

③冷蔵庫の中身を使い忘れない様にする工夫

世の奥様方で「私は冷蔵庫の中身を使い忘れて捨てたことなど無いわ」と言い切れる方はごく少数でしょうね。それ位多くの奥様方が食料品を無駄にしています。

一説によればこの様にして無駄に捨てられる食料品の総量は、日本で生産される食料品の総量にほぼ等しいそうです。

日本では現在「食料自給率が低い」ということが問題になっていますが、仮に今日本中で冷蔵庫の中身を捨てる人がいなくなったとしたら、日本の食糧問題など一瞬にして解決してしまうわけですね。

いろいろ問題が多い農家の所得保障などする必要も無くなります。

冷蔵庫の中身を使い忘れない様にする最大の秘訣は「入れ過ぎない」ことです。中身が少なければ見落とすことがありませんので、使い残しを忘れることも無くなります。

次には中身を記録してそれを見えるところに置いておくことです。ホワイトボードを冷蔵庫の扉にぶら下げておいても良いし、いちいち書き込むのが面倒なら買物のレシートを貼っておいて、使い終わったものは消し込む様にしても良いでしょう。

それでも使い忘れるという人は、出来るだけ冷凍食品を利用する様にすれば良いと思います。

冷凍食品なら賞味期限も長いし、仮に賞味期限内に食べなくても1ヵ月程度は問題ありません。賞味期限というのはその間に食べるのが一番美味しく食べられるという意味で、それを過ぎたら腐敗して食べられなくなるという意味ではありません。

④薬を飲み忘れない工夫

これは「不要な繰り返し作業をなくす」の章でも述べましたが、薬を飲む時間というのは食前、食後など基本的に食事が基準になっています。

ですから食事をする時に注意喚起すれば良いわけで、その為には白い紙にマジックで「薬を忘れるな!」と大きく書いたものを、透明なテーブルクロスの下に置いておけばまず飲み忘れることはありません。

外出先で忘れない為には、それこそ腕にカラーの輪ゴムでも嵌めておくのが良いかも知れませんね。

⑤買い物忘れをしない工夫

これはもう「買物に行く前に買う物をメモしておく」の一言に尽きます。紙に書かなくても携帯電話のメモ機能を使っても良いと思います。

⑥パスワードを忘れない為の工夫

現代はやたらパスワードを使う時代です。ですからパスワードの管理は結構面倒ですね。何でもかんでもひとつかせいぜい3つ程度のパスワードで管理していれば記憶するのも簡単ですが、それだと万が一外部にパスワードが漏れた場合に被害が大きくなります。

そこでセキュリティの為にパスワードをいくつも作ったり時々変更したりしますが、そうすると今度は記憶するのが大変で忘れ易くなります。

そこで何かにパスワードを記録して置くことになりますが、その場合手帳に書くのは止めましょう。何処かで紛失した時手帳にはセキュリティシステムがありません。

筆者の場合は携帯電話のアドレス帳に架空の人物を作って、その人の電話番号やメールアドレスなどにパスワードを埋め込んでいます。もちろん電話番号もメールアドレスも実在のものではありません。

つまり自分だけに分かる簡単な暗号を作っているわけです。架空の人物は必要に応じて複数作って、Aさんは○○銀行、Bさんは××のクレジットカードという様に覚えておきます。

携帯電話を使うのは常時持ち歩いているのと、セキュリティ・ロックが掛けられるから、何処かで落としてもかなり安全性が高いからです。つまりセキュリティ・ロックと手製の暗号で、情報が二重に保護されていますから。

もちろん紛失した時や水の中などに落として記録が消去されてしまった場合に備えて、携帯電話のマイクロSDにも記録してあります。

架空の人物を作るこの方法は、実は携帯電話をまだ持っていなかった時代には手帳で同じことをしていました。


脳にインパクトを与える為には様々な色を使うのがお勧めです。色が脳にインパクトを与えることは昔からよく知られていますので、これを記憶術にも取り入れましょう。

色には大きく分けて「暖色系」と「寒色系」があります。

暖色系というのは赤やオレンジの様な明るい色で、気持ちをわくわくさせて元気を出させてくれる効果はあるのですが反面気持ちが落ち着かず、何かを覚えようという時にはあまり良くないと言われています。

寒色系というのは青や濃い緑などの色ですが、この寒色系の色には気持ちを落ち着ける鎮静効果があります。ですから気持ちを落ち着けて何かを覚えようとする時には、寒色系の色が適しています。

この様な色の効果は小さなものよりも目の前一杯に広がる時の方が、脳に与えるインパクトが大きくなります。例えば勉強部屋や書斎の壁や天井、カーテンなどのカラーに使うのが効果的です。

ただ例外もあって黄色は暖色系の色ですが、「集中力」や「判断力」、「思考力」などを高める効果があると言われています。黄色が工事現場や工場などで安全色としてよく使われるのはその為です。

色と言えば照明の色もありますが何かの勉強をしたり覚えたりしたい時は、照明の色は「昼光色」か「昼白色」と言われる自然光に近いものにします。


集中力とは「何かひとつのことに没頭する力」ですが、この集中力は筋力と同じ様に瞬発的な集中力と持続的な集中力があります。

よく一流のプロゴルファーがアドレスに入った時は周囲にいるギャラリーの姿は視界から消え、声は聴こえなくなると言われますが、これは瞬発的な集中力が為せる業です。

但し、何かを記憶する為に必要なのは持続的な集中力です。持続的に集中出来れば記憶力アップにつながることは間違いありません。

1日の内で集中力が最も高まる時間帯は夜中と早朝だと言われています。受験生の多くが夜中に受験勉強をしたり、多くの企業で早朝会議が行われるのは、この時間帯が一番集中力が高まるからです。もちろんこの時間帯が物事に集中出来るのは周囲が静かなこともあります。

集中力を高める方法として昔から行なわれているのが「禅」です。本格的な座禅などでは無くても、何かを始める前に椅子に深く座り姿勢を楽にして目をつぶり、しばらくそのままの姿勢で心を落ち着けてから取り掛かるのは集中力を高める効果があります。

集中力を高める為には飲み物は、コーヒーや紅茶などよりも日本茶(緑茶)が適しています。日本茶には脳をリラックスさせる成分が豊富に含まれています。

集中力がダウンするのは

  • 体調が悪い時
  • 何か気掛かりなことがある時
  • 眠りから覚めたばかりの時(寝起き)
  • 飽きた時
  • 満腹な時

などです。ですからこういう状態の時には何かを覚えようとしても効果が上がりません。

何かを読んだり勉強したりする時にタイマーを使う方法も、記憶力アップに効果があります。時間が限られていると思うとサボっている暇が無く、手元のことに集中できるからです。

それまでどうも勉強の効率が悪かったのが、試験の前日になっていよいよ後が無い状態になると、急に勉強の効率が良くなった経験をされたことはありませんか?

部屋の温度も記憶に関係して来ます。人間の体はポカポカ陽気だと眠くなる様に出来ていますので、春の様なうららかな室温も何かを記憶しようという場合には適しません。

どちらかというと暑い時よりも寒い時の方が記憶力は良くなるのですが、かと言ってあまり寒過ぎるのも寒さが気になって能率が上がりませんね。

一番良いのはいわゆる「頭寒足熱」ですので、例えば冬は少し厚着をした上でエアコンやストーブの温度は控え目、その代わり足元に猫用の小さな電気マットを置くなどして頭寒足熱にします。足の先が暖かいと暖かい血液が体を回りますので、案外寒くは無いものです。夏のエアコンは27度前後に調節しておきます。

家で勉強している場合は、気が散るようなものは周りの環境から出来るだけ取り除きましょう。忙しい時ほどこういった余計なものが邪魔をするものです。勉強中はテレビやラジオは消しましょう。電話の呼び出し音も鳴らない様にしましょう。

勉強中に音楽を聴く必要がある場合は、勉強モードを壊さない様な音楽にします。少し専門的な話をさせていただくと、集中する時に良い音楽というのは「テンポ116」の音楽だそうです。

テンポ116というのは1分間116拍のややアップテンポのリズムです。音楽の中ではクラシックにある「○○のマーチ」という様な曲がこれに相当します。同じマーチでも軍艦マーチの様なマーチは駄目ですよ。

わくわくして勉強を止めて外へ遊びに行きたくなります(笑)。長時間勉強する場合は間で休憩を取ることも大切です。休憩を取らずに勉強を続けるとやがて集中力に支障が出て来ます。

一般的に人間の集中力が持続するのは1時間程度ですから、1時間勉強したら15分位は休憩する様にします。休憩を取るとそれまでの勉強から心が解放されて、脳をリフレッシュ出来ます。

休憩中にはちょっと表を散歩をしたり、お腹がすいている時は体に良い軽食を口にするようにしましょう。但し、眠くなりますから満腹は禁物です。

名前や場所の覚え方

広いショッピングモールなどで買い物をすると、車を駐車した場所を忘れてしまってイライラすることがありませんか?

この様なトラブルはショッピングモールだけでなく広い駅前駐車場や、観光地の有料駐車場などでもよくあります。うろ覚えの記憶を頼りに広い駐車場の中で自分の車を探し回るのは本当に嫌になります。

この様なことが無い様にする為には、止めた周囲のものを良く見て、その風景と合わせて駐車した場所を記憶するのがコツです。

広い駐車場に車を駐車した時は停めた場所を思い出し易い様な目印を探してみましょう。駐車エリアに番号などが付いていればこれは簡単ですから、メモに書き留めて分かりやすい場所に置いておきましょう。

携帯電話を持っている人なら附属のカメラで、エリア番号をちょっと撮影しておくのも良いと思います。手間が掛からず間違いもありません。

エリア番号などが無い駐車場の場合は、前後左右に何か目印になる様なものが無いかを探します。この時目印にする目標は出来るだけ真正面と、左右どちらかの真横になるものを探します。

駐車場は太平洋の真ん中にあるわけではありませんので、探せば必ず何か目印になるものはあります。見付ければそれを覚えると共に、カメラ付き携帯電話を持っていれば、念の為にその目印を写真に写しておきます。

この様にして目印になるものを決めておけば、そのふたつから引っ張った線が直角に交わるところに自分の車があります。要するに真正面に「目印A」が見え、左右どちらかに「目印B」が見える位置の付近に自分の車があるはずですから、その付近を探します。

この様に2個以上の目印から線を引いて自分の位置を求める方法は「クロスベアリング法」と言って、船が陸地の見える沿岸を航行中に自分の位置を求める為の方法として古くから使われていたものです。

船で用いる場合はコンパスと海図(海の地図)を使いますが、駐車中の自分の車を探す時は頭の中のコンパスと海図だけです。観光地など地理不案内な所へ行く時は必ず詳細な地図を持って行って、駐車場の管理人に駐車場の位置を地図上にマークしてもらいましょう。

有名な観光地などの場合は駐車場がたくさんありますので、地理不案内な場合自分の車を停めたのがどこの駐車場だったのか、分からなくなることがあります。地図にマークしてもらっておけば、地元の人に地図を見せれば場所を教えてくれます。


あなたはお料理をよくしますか?料理をする時は調味料の量をきちんと把握することが不可欠ですね。せっかく作るものはおいしく仕上げたいですし、調味料の分量を間違えれば誰も口をつけてくれません。

調味料はレシピを頭の中で思い浮かべながら、声に出して量る様にすると間違いが少なくなります。ただプロの料理人が調味料を使う時は量りなど使わず全て「勘」です。

実家が日本料理店で父親が板前さんのある女性タレントが言っていましたが、休日に自宅で父親と一緒に料理をする時に醤油の量や塩、砂糖の量を聞いても、「そんなものは勘だ」と言うだけで具体的に教えてくれないそうです。

インタビューで「今度一緒に料理をする時は、父親が醤油を入れる時にお玉をさっと出してやろうと思っています」と言っていました。


確か以前会っているのに、どうしてもその人の名前が思い出せないということは良くあります。人の名前を忘れてしまうというのはかなり恥ずかしいことです。

例えばその人を別の誰かに紹介する時に名前が出て来なかったりしたら、それこそ本当に焦ってしまいますね。第一相手に対して失礼です。

この様に顔は思い出せても名前が出てこない、これは思っている以上によく起きてしまう出来事です。

しかしちょっと不思議だと思いませんか?人の名前は現代の日本人の場合文字数は多くても10文字程度です。つまり人名というのは情報量としては非常に少ないのです。

それに引き換え人間の顔形というのは膨大な情報があります。試しにご自分のパソコンにデジカメで撮影した自分の顔写真と、文書ソフトに書いた自分のフルネームを取り込んで容量(情報量)を比較してみてください。多分一千倍ぐらい容量が違うはずです。

では何故情報量が少ない名前は忘れてしまうのに、それよりはるかに情報量が多い人の顔を脳は覚えているのでしょうか?それは脳にとっては名前を覚えるよりも顔を見分けるプロセスの方が簡単だからです。

人の顔はビジュアルな情報として風景などの情報と同じ様に、脳にそのまま保存されます。つまり様々な情報はあたかも1枚の写真か絵の様に、全部がひとつの情報になって一括して保存されるわけです。

この時働くのは右脳だと言われていますが、これは脳にとっては比較的楽な作業です。ところが名前を覚えるとなるとプロセスが全く異なり、脳にとってはエネルギーをより要する難しい仕事になります。

名前はまず短期記憶としてその他の情報と同じ位置付けで保存されます。短期記憶というのはその情報が繰り返しインプットされるなど何等かのアクションが無ければ、元々覚えてから数十秒後には忘れていてもおかしくない情報です。

つまり人の名前というのはそれほど頼りない記憶のひとつとして分類されているのです。ではこの忘れ易い名前を顔と同様に、確実に長期記憶として保存する為にはどうすれば良いのでしょうか?

人の名前をしっかりと覚える為には、名前と何か重要なことを関連させるとうまく行きます。重要なことというのはその人の顔と名前が結び付く様な情報で、例えば「熊に似た熊田さん」や、「太った太田さん」などの様なものです。

世の中には人の名前は一度聞けば絶対に忘れないという人がいます。しかしこの人達は天才的な頭脳を持って生まれたわけでも何でも無いのです。

名前を覚えること以外ではごく普通の人です。全国のJRの駅名を全部暗記している鉄道マニアと同じです。

ただこの様に多くの人の名前や鉄道駅などの情報を暗記している人というのは、先に申し上げた様に名前や駅名と、何かそれに関わる別の特徴ある情報を組み合わせることに長けています。そしてそれによって脳に与える刺激をより大きくして、記憶を長期記憶としてしっかり定着させています。

人の名前を覚えて忘れない為に、誰もが明日からでも出来る簡単な方法があります。それは「名前」というひとつの情報をひとつの入力装置からだけでなく、複数の入力装置から脳にインプットする方法です。

人の名前を覚える為にはまず名前を言語情報として耳で聞くだけでなく、文字情報として目からもインプットします。名刺を頂ければそれが一番良いのですが、名刺をもらえない場合はその人と別れた直後に名前をカードなどに書いて目でも記憶します。

人間は外部の情報を脳にインプットするのに、視覚、聴覚、臭覚、触覚、味覚のいわゆる「五感」を使いますが、この時一つの感覚よりは二つ、二つの感覚よりも三つの感覚を使った方が記憶され易くなります。

人の名前を聞くだけでなく紙に書いた情報にするということは、聴覚の他に視覚も使って脳にインプットしているわけですから、当然名前を聴くだけの場合よりも脳に刺激を与えます。

次に人を紹介された時はしっかり注意を向けて聴き、相手によく聞こえるくらいの声で口に出して「○○さんですね」と復唱しましょう。名刺をもらった時も同様で、名刺を受取ると同時に「○○さんですね」と声に出して名前を確認します。もちろん同時に顔もしっかりと確認します。

わずかな動作ですが実はこの様に最初に相手の名前を声に出して確認することが、その後の記憶に大きな影響を与えているのです。

更に会話中は出来るだけ相手の名前を繰り返し呼びかけて、顔と名前をリンクさせる様にしましょう。名前を繰り返せばそれだけしっかり脳に記憶されて、次に再会した時に名前を思い出し易くなります。

そして別れ際にはもう一度何か理由を付けて相手の名前を呼びかけます。例えば「○○さん、今日はいろいろありがとうございました」と言った様な感じですね。

この様に最後に名前を確認するのを「親近効果」と言って、実は人間はこの最後の部分を一番しっかりと記憶する様になっているのです。ですから政治家が演説をする時などに、最後に印象的な言葉で締め括ることはよくあります。

有名な演説ではアメリカのオバマ大統領の選挙演説の最後の部分の決まり文句「Yes we can」ですね。上院議員としてはまだ新米でこれと言った実績も無いオバマ氏が、ベテラン上院議員の共和党候補マケイン氏を破ったのは、あの最後のフレーズの効果が大きかったと思います。

眠りのテクニック

「睡眠」というのは人類も含め、動物がこの地球上に誕生した時から続けられている生理ですが、実は睡眠の効果や睡眠中の脳の働きなどには諸説があって謎の部分がまだ多く残っています。

ただその中で睡眠が人間の記憶の形成に大きな影響を与えていることは分かっています。睡眠不足から結果として記憶力に影響が出ている人は少なくありません。

睡眠不足は特に集中力の欠如となって現れます。睡眠不足になると脳は注意散漫になりがちで、これは仕事を定められた時間内に終わらせなければならない時など、特に集中力を要する場で影響が強く出ます。ただその半面計算能力や創造力、連想能力などはほとんど変化しません。又、記憶力もそれほど大きくは低下しません。

あなたも過去に試験前日などに徹夜勉強をした経験をお持ちだと思いますが、それで頭がぼーっとなって、試験中に数学の公式が頭から消えてしまったなどということは無かったと思います。又、暗記物の典型である歴史の年代が思い出せなくなったことも無かったと思いますが、如何でしょうか?

もっとも3日も4日も徹夜をすれば話は別です。私達は平均して1日に6~8時間の睡眠が必要です。

体をきちんと機能させる為にはまずはしっかりと眠ることが不可欠なのですが、世の中には様々な理由からなかなか寝付けないという人もいます。

その様な人の中には睡眠薬の力を借りて眠りにつく人もいるでしょう。ただ薬は適切に扱わないと依存する様になり、睡眠薬が無ければ眠れない体なってしまうこともあるので気を付けましょう。又、薬の量も増えてそれが原因で死に至ることもあります。

睡眠薬代わりにアルコールの力を借りる人もおられますが、アルコールはコントロールして適量を飲まなければ体に悪影響が出ます。例えば飲み過ぎて二日酔い状態になっていると、仕事や学習への集中力に影響が出ます。

それだけでなく毎日アルコールを大量に摂取することを続けていると、肝臓など内臓器官を損なうことにもなります。

アルコールの適量というのは固定されたものではなく、例えば加齢によっても変化しますので、中高年になると若い時代と適量の基準が変わって来ます。

薬やアルコールに頼らないで眠りにつける秘訣をご紹介しましょう。まずは「眠る」ことばかりに焦点を当てないことです。集中すればするほど眠るのが難しくなってしまいます。羊さんの数を数えるのは逆効果です。羊さんの数が頭の中でどんどん増えて、かえって目が冴えてしまいます(笑)。

リラックスした雰囲気にいる自分をイメージしましょう。明るい環境では眠り難くなりますからベッドに入ったらライトは消します。住いが都市部の道路沿いで外部の音が気になるなら、サッシを二重窓にしたり厚手のカーテンを閉める様にして、部屋を静かにします。

眠る前は出来るだけ同じスケジュールで過ごす様にしましょう。こうすると「もう寝る時間だよ」と体が合図してくれる様になります。週末だからと言って必要以上に眠ってはいけません。寝過ぎると今度は夜に眠れなくなり、せっかくの習慣が台無しになってしまいます。

ベッドに入ったらテレビや読書、喫煙は控えましょう。電話で話すのもNGです。いずれも神経が興奮状態になってなかなか眠れなくなります。

寝室は眠る為、くつろぐ為の聖域でなくてはなりません。寝付くまでに1時間半以上かかる場合は、いったん別の部屋に移動しましょう。そしてしばらくの間あまり興味の無い内容の本を読んだりして過ごします。この時部屋は静かな状態を保ってください。それから眠気を催して来たら再び寝室に戻ってベッドに入ります。

近年の研究で脳は睡眠中も様々に働いていることが分かりました。記憶に関して言えば、人間の脳は睡眠中も記憶を定着させる働きをしているそうです。ですから暗記物の勉強をするのは睡眠直前の時間帯が良いと言われます。

暗記をしてすぐに睡眠につくと睡眠中に記憶が消えることはありませんので、翌朝まで必ず残っています。そこで朝目が覚めてしばらく経って脳が目覚めたころ、昨夜暗記した内容を思い出してみます。この時思い出した内容はその後記憶が保持されます。

思い出せなかったものはまだインプットが不確かだったわけですから、その場ですぐに教科書などを開いて記憶を補完しておきます。これが暗記物の勉強をする時のテクニックのひとつです。

毎晩ぐっすり眠れるようになると脳は記憶力をアップさせる為に機能し始めます。脳が活発になれば以前は思い出せなかったことも思い出せる様になります。

2023.12.24 11:22
2025.01.04 18:15
雑記雑学・トリビア

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